判旨
窃盗罪の嫌疑で逮捕・勾留された後に無罪が確定した者に対し、刑事補償法に基づき拘禁日数に応じた補償金を交付すべきである。補償額の算定にあたっては、同法4条2項所定の諸般の事情を斟酌して、1日当たりの金額を決定する。
問題の所在(論点)
刑事補償法に基づく補償の要件を満たす場合に、拘禁期間に対する具体的な補償金額をいかに算出すべきか、また本件の拘禁実態に照らして妥当な補償額はいくらかが問題となる。
規範
刑事訴訟法により無罪の判決を受けた者が、その事件につき抑留または拘禁を受けていたときは、刑事補償法に基づき補償を請求できる。補償金の額は、拘禁日数に応じて定められるが、具体的な1日当たりの金額の決定にあたっては、同法4条2項に掲げられる拘禁の種類、期間、本人の受けた精神上の苦痛、身体上の損傷、利益の喪失その他の諸般の事情を総合的に勘案して裁量により決定される。
重要事実
請求人は、窃盗罪の嫌疑により昭和23年2月27日に逮捕され、同年3月1日に勾留、同年4月28日に保釈された。第一審(静岡地裁)および控訴審(東京高裁)において有罪判決を受けたが、最高裁判所において原判決が破棄され、昭和27年4月24日に無罪の判決が確定した。本件における逮捕・勾留は、刑事補償法3条(本人の虚偽自白等)または5条2項(他罪による拘禁等)の除外・制限事由には該当しないことが記録上明らかであった。
あてはめ
請求人の拘禁日数は、昭和23年2月27日から同年4月28日までの合計62日間である。本件においては、刑事補償法3条や5条2項に該当する事情は認められない。そこで、同法4条2項の規定に基づき、拘禁の種類や期間等の諸般の事情を斟酌すると、1日あたり400円の割合で補償を行うのが相当と判断される。これを合計すると、62日×400円=2万4800円となる。
結論
請求人に対し、拘禁日数62日に対応する補償金として合計2万4800円を交付する。
実務上の射程
刑事補償の具体的金額算定のプロセスを示す。実務上は、拘禁による不利益の内容(精神的・経済的損失)を個別具体的に評価し、法定の範囲内で裁量的に金額が決定されることを確認する一事例として機能する。
事件番号: 昭和61(も)1 / 裁判年月日: 昭和61年4月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】無罪判決を受けた者が、その事件に関して逮捕・勾留等による未決の拘禁を受けた場合には、刑事補償法に基づき、拘禁日数に応じた補償金が交付される。補償金額は、法に定められた範囲内で、拘禁の種類、期間、本人の受けた精神的苦痛や財産上の不利益等の諸事情を考慮して決定される。 第1 事案の概要:請求人は、殺人…