判旨
刑事補償法1条1項に基づき、未決勾留後に無罪判決が確定した者に対し、その抑留・拘禁日数に応じた補償金を交付すべきである。本件では、公文書偽造等で長期間拘禁された後に上告審で無罪となった請求人に対し、1日400円の割合による補償が認められた。
問題の所在(論点)
刑事訴訟手続において抑留・拘禁された被告人が、上告審で無罪判決を受けた場合、刑事補償法上の補償請求が認められるか。また、その際の補償額はどのように決定されるべきか。
規範
刑事補償法1条1項の規定によれば、刑事訴訟法による抑留または拘禁を受けた者が、無罪の判決を受けたときは、国に対してその抑留または拘禁による補償を請求することができる。補償額の算定にあたっては、同法4条に基づき、抑留拘禁日数に応じた適正な額(当時の法定上限等の基準内)を交付するものとする。
重要事実
請求人は、渡米目的で兵歴につき虚偽の証明願を役場に提出し、村長に虚偽の証明をさせた公文書偽造・行使および旅券騙取の詐欺未遂の事実により、昭和23年6月4日に逮捕状の執行を受け抑留された。その後、同年10月26日に保釈されるまで、合計145日間にわたり拘禁された。第一審で懲役4年、控訴審で懲役2年の判決を受けたが、上告の結果、昭和27年12月25日に最高裁判所において原判決が破棄され、無罪の判決が言い渡された。
あてはめ
請求人は公文書偽造行使詐欺未遂被告事件において、逮捕から保釈まで145日間の抑留拘禁を受けている。この拘束期間は、刑事訴訟法に基づく適法な強制処分としてなされたものであるが、最終的に最高裁判所において無罪判決が確定したことにより、刑事補償法1条1項の要件を充足する。補償額については、当時の社会情勢や同法4条の規定を考慮し、1日あたり400円という算定が相当と認められる。したがって、総額58,000円(145日×400円)の交付が適当である。
結論
請求人は刑事補償法1条1項により補償を請求することができ、抑留拘禁日数145日に対し、1日400円の割合による金58,000円の補償金を交付する。
実務上の射程
刑事補償請求の実務において、無罪判決確定後の補償義務を認めた基本的な事案である。答案上は、憲法40条を背景とする刑事補償法の具体的適用例として、抑留・拘禁の事実、無罪判決の確定、および日数に応じた補償額算定という一連の流れを記述する際の基礎となる。
事件番号: 昭和48(も)1 / 裁判年月日: 昭和48年12月10日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】刑事事件において無罪判決が確定した場合、刑事補償法1条1項に基づき、未決勾留の日数に応じた補償金を国は交付しなければならない。 第1 事案の概要:請求人は、公文書毀棄被告事件について起訴され、第一審および第二審で有罪判決を受けたが、最高裁判所にて原判決が破棄され、無罪判決が言い渡されて確定した。請…