判旨
旧刑事訴訟法下で公判請求された事件(旧法事件)の執行猶予取消請求における特別抗告は、刑事訴訟法応急措置法18条に基づき、憲法判断の不当を理由とする場合に限定される。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法施行前に公判請求がなされた事件(旧法事件)の執行猶予取消手続において、どのような事由があれば特別抗告が認められるか。特に、新刑事訴訟法上の職権破棄事由(411条各号)のみを理由とする抗告の適法性が問題となる。
規範
昭和24年1月1日前に公判請求がなされたいわゆる「旧法事件」については、旧刑事訴訟法および刑事訴訟法応急措置法が適用される。同法の下では、抗告裁判所の決定に対する特別抗告は、憲法適合性に関する判断の不当を理由とする場合に限り許容されるものであり、単に新刑事訴訟法411条に該当するような事由(判決に影響を及ぼすべき著しい正義に反する事由等)を主張するのみでは適法な抗告理由とならない。
重要事実
本件は、執行猶予の言渡しを受けた被告人に対し、その取消しを求める請求に関する事件である。被告事件の公判請求は、第1回が昭和23年4月1日、追公判請求が同年5月6日および10月25日になされており、いずれも昭和24年1月1日(現行刑事訴訟法施行日)前に行われていた。申立人は、原決定に新刑事訴訟法411条に該当する事由があるとして、最高裁判所に対し特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件各公判請求はいずれも昭和24年1月1日前になされているため、刑訴施行法2条に基づき、本件執行猶予言渡取消請求事件には旧刑事訴訟法および刑訴応急措置法が適用される。旧刑事訴訟法469条は抗告裁判所の決定に対する再抗告を認めていない。例外的に認められる刑訴応急措置法18条の特別抗告は、憲法判断の不当を理由とする場合に限定される。申立人の主張は、単に新刑事訴訟法411条(判決後の刑の廃止、著しい量刑不当等)に該当する事由があるとするにとどまり、憲法違反の主張を含まないため、適法な抗告理由とはいえない。
結論
本件特別抗告は適法な理由を欠くため、棄却される。
事件番号: 昭和55(し)93 / 裁判年月日: 昭和55年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の理由として憲法31条違反を主張しても、その実質が単なる法令違反の主張にすぎない場合は、刑事訴訟法433条の抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し、憲法31条(適正手続きの保障)に違反する旨を主張して最高裁判所に特別抗告を申し立てた。しかし、その主張の具体的内容…
実務上の射程
法の経過措置に関する判断であり、旧法事件における上訴・申立ての不服理由の範囲を画定したものである。現代の司法試験実務においては、法令の改正に伴う経過措置の解釈や、特別抗告が憲法問題に限定されるという原則的構造を理解する上での参考資料となる。
事件番号: 昭和27(し)79 / 裁判年月日: 昭和27年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する特別抗告であっても、その実質が単に下級審の決定の適法性を非難するものに過ぎない場合は、刑事訴訟法433条の適法な特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、被告人に対して下された執行猶予取消決定を適法とした原決定に対し、弁護人が憲法違反を主張して特別抗告を申し立てた事…
事件番号: 昭和26(し)67 / 裁判年月日: 昭和33年3月17日 / 結論: その他
刑法第二六条(昭和二八年法律第一九五号による改定前のもの)二号にいう「猶予ノ言渡前ニ犯シタル他ノ罪ニ付禁錮以上ノ刑ニセラレタルトキ」とは、その罪につきの禁錮以上の実刑を言渡された場合を指すものであつて、刑の執行猶予の言渡があつた場合を含まない趣旨に帰着する。
事件番号: 昭和43(し)33 / 裁判年月日: 昭和43年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法は81条を除き審級制度を規制しておらず、すべて立法の裁量にゆだねられている。したがって、刑訴法433条1項所定の場合を除き再抗告を認めないことは憲法32条に違反しない。 第1 事案の概要:抗告裁判所がした決定に対し、抗告人が更なる抗告を申し立てた事案である。抗告人は、刑訴法433条1項(憲法違…
事件番号: 昭和29(し)52 / 裁判年月日: 昭和29年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定に対しては即時抗告のみが許容され、即時抗告の提起期間経過後に通常の抗告を行うことはできない。 第1 事案の概要:被告人に対し刑の執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定がなされた。これに対し、不服申立人が即時抗告の提起期間(3日)を経過した後に、通常の抗告(または即…