判旨
憲法は81条を除き審級制度を規制しておらず、すべて立法の裁量にゆだねられている。したがって、刑訴法433条1項所定の場合を除き再抗告を認めないことは憲法32条に違反しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上、抗告裁判所の決定に対して刑訴法433条1項の事由がない場合にさらなる不服申立てを認めないことが、憲法32条等の審級制度の観点から憲法に違反するか。
規範
憲法には、81条以外の審級制度についてこれを直接規制する規定はなく、審級構成の具体的内容はすべて立法政策にゆだねられている。
重要事実
抗告裁判所がした決定に対し、抗告人が更なる抗告を申し立てた事案である。抗告人は、刑訴法433条1項(憲法違反・判例相反を理由とする特別抗告)の事由に当たらない場合であっても、不服申立ての機会が制限されることは憲法32条(裁判を受ける権利)等に違反すると主張した。
あてはめ
審級制度の設計は立法の広範な裁量に属するところ、現行の刑訴法は特定の重大な事由がある場合にのみ特別抗告(433条)を認めるという制度を採っている。これは立法府が審級の必要性と手続の迅速・安定を比較衡量して定めたものであり、同条の要件を満たさない場合に更なる抗告を制限したとしても、裁判を受ける権利を本質的に侵害するものではない。
結論
憲法81条の例外を除き、審級の構成は立法権の範囲内であるため、刑訴法433条1項所定の場合を除き更なる抗告を認めない運用は合憲である。
実務上の射程
憲法32条が裁判公開や適正手続を要請するものの、三審制そのものを憲法上の要請とするわけではないことを示す基本判例である。司法試験においては、不服申立て手続の合憲性を論ずる際の「立法裁量論」の根拠として引用可能である。
事件番号: 昭和51(し)64 / 裁判年月日: 昭和51年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法31条、39条、11条、13条違反を主張してなされた特別抗告について、その実質が単なる法令違反の主張にすぎない場合には、刑訴法433条の抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定等に対し憲法31条(適正手続)、39条(不利益変更の禁止・一事不再理等)、11条(基本的人権の享有…
事件番号: 昭和55(し)93 / 裁判年月日: 昭和55年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の理由として憲法31条違反を主張しても、その実質が単なる法令違反の主張にすぎない場合は、刑事訴訟法433条の抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し、憲法31条(適正手続きの保障)に違反する旨を主張して最高裁判所に特別抗告を申し立てた。しかし、その主張の具体的内容…
事件番号: 昭和52(し)28 / 裁判年月日: 昭和52年4月13日 / 結論: 棄却
一 刑法二六条の二第二号が憲法三九条に違反しないことは、昭和四一年(し)第五九号同四二年三月八日大法廷決定(刑集二一巻二号四二三頁)の趣旨に照らして明らかである。(昭和四九年(し)第一一〇号同年一二月二日第二小法廷決定と同旨) 二 刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が口頭弁論を開くことなく非公開の裁判をしても憲法三一条に…
事件番号: 昭和27(し)35 / 裁判年月日: 昭和33年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下で公判請求された事件(旧法事件)の執行猶予取消請求における特別抗告は、刑事訴訟法応急措置法18条に基づき、憲法判断の不当を理由とする場合に限定される。 第1 事案の概要:本件は、執行猶予の言渡しを受けた被告人に対し、その取消しを求める請求に関する事件である。被告事件の公判請求は、第1…
事件番号: 昭和28(し)28 / 裁判年月日: 昭和28年5月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所への特別抗告は、刑事訴訟法405条に規定する事由がある場合に限り認められ、単なる法律解釈の争いは不適法である。 第1 事案の概要:抗告人が、刑事訴訟法349条(刑の執行猶予の言渡しの取消しの手続)の解釈を巡り不服を申し立て、最高裁判所に対し特別抗告を行った事案。抗告人は主張の中で憲法違反…