一 刑法二六条の二第二号が憲法三九条に違反しないことは、昭和四一年(し)第五九号同四二年三月八日大法廷決定(刑集二一巻二号四二三頁)の趣旨に照らして明らかである。(昭和四九年(し)第一一〇号同年一二月二日第二小法廷決定と同旨) 二 刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が口頭弁論を開くことなく非公開の裁判をしても憲法三一条に違反しないことは、昭和四〇年(し)第九八号同四二年七月五日大法廷決定(刑集二一巻六号七六四頁)の趣旨に照らして明らかである。
一 刑法二六条の二第二号と憲法三九条 二 刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が口頭弁論を開くことなく非公開の裁判をすることと憲法三一条
刑法26条の2第2号,刑法26条,刑法26条の2,憲法39条,憲法31条,刑訴法349条,刑訴法419条
判旨
刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審において口頭弁論を経ないことは憲法31条に違反せず、また保護観察付執行猶予者が遵守事項を遵守しなかったことによる猶予の取消し(刑法26条の2第2号)は憲法39条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 執行猶予取消手続の抗告審において口頭弁論を開かないことが、憲法31条の適正手続に反するか。 2. 刑法26条の2第2号に基づく執行猶予の取消しが、憲法39条の二重処罰禁止に反するか。
規範
1. 憲法31条の適正手続の保障は、刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審において必ずしも口頭弁論を開くことを要求するものではない。 2. 刑法26条の2第2号による執行猶予の取消しは、有罪判決後の刑の執行に関する事後的措置であり、二重処罰を禁止する憲法39条には抵触しない。
重要事実
被告人に対し保護観察付執行猶予の判決が言い渡されたが、後に刑法26条の2第2号(保護観察中の遵守事項違反)に基づき、執行猶予の取消決定がなされた。被告人は、抗告審において口頭弁論が開かれなかったことが憲法31条に、また当該取消規定自体が憲法39条(二重処罰の禁止)に違反するとして抗告した。
事件番号: 昭和42(し)32 / 裁判年月日: 昭和42年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予の取消しは、執行猶予の判決に内在する予定された事態の実現にすぎず、憲法39条が禁じる二重処罰には当たらない。また、取消しの効果は取消決定の告知によって生じる。 第1 事案の概要:被請求人は刑の執行猶予の言渡しを受けたが、保護観察期間中に情状の重い遵守事項違反があった。これを受け、裁判所…
あてはめ
1. 執行猶予取消手続は、既に確定した刑の執行を猶予するか否かを判断する手続であり、その抗告審において書面審理のみで決定を行うことは、適正な手続としての本質を欠くものではない(憲法31条に違反しない)。 2. 執行猶予の取消しは、猶予の条件に反したことによる「猶予の終了」と「本来の刑の執行」を意味するにすぎず、一つの犯罪について重ねて刑事責任を問うものではない(憲法39条に違反しない)。
結論
本件執行猶予取消決定およびその手続に憲法31条、39条違反の違憲性は認められないため、抗告は棄却される。
実務上の射程
執行猶予取消手続における手続的保障の限界と、遵守事項違反による取消しの合憲性を確認した判例である。答案上では、執行猶予取消手続が公判手続そのものではないことを踏まえ、簡略化された手続でも合憲とされる根拠として活用できる。
事件番号: 平成1(し)10 / 裁判年月日: 平成元年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審において、口頭弁論を開くことなく書面審理によって裁判を行うことは、憲法31条、32条、37条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し、刑の執行猶予言渡しの取消しがなされた。これに対し被告人が抗告を申し立てたところ、抗告審において口頭弁論が開かれることなく、…
事件番号: 昭和49(し)55 / 裁判年月日: 昭和49年6月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条の2第2号に基づく執行猶予の取消しは、憲法31条の罪刑法定主義や憲法39条後段の二重処罰の禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し、刑法26条の2第2号(猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき)に基づき、執行猶予の言…
事件番号: 昭和51(し)74 / 裁判年月日: 昭和51年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護人選任権および口頭弁論を請求する権利の侵害が認められない限り、適正な手続を定めた憲法31条および裁判を受ける権利を定めた32条に違反しない。 第1 事案の概要:申立人が、自己の弁護人選任権および口頭弁論を請求する権利が侵害されたとして、憲法31条および32条違反を理由に特別抗告を申し立てた事案…
事件番号: 昭和51(し)127 / 裁判年月日: 昭和51年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条3号による執行猶予の取消しは、憲法39条の「二重の処罰(二重処罰の禁止)」に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、執行猶予の言渡しを受けた後、その猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金に処せられた。これに基づき、刑法26条3号を適用して執行猶予の取消しがなされた。抗告人は、この取消しが憲法…