刑法二六条三号の規定と憲法三九条
憲法39条,刑法26条3項
判旨
刑法26条3号による執行猶予の取消しは、憲法39条の「二重の処罰(二重処罰の禁止)」に違反しない。
問題の所在(論点)
執行猶予期間中の再犯を理由として執行猶予を取り消すことを定めた刑法26条3号の規定は、憲法39条(二重処罰の禁止)に違反するか。
規範
刑法26条3号の規定は、執行猶予の言渡しを受けた者が猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金に処せられた場合に執行猶予を取り消すことができるとするものであるが、これは既に確定した判決による刑の執行に関する宥恕的措置を撤回するものにすぎず、新たな刑事責任を問うものではない。したがって、憲法39条が禁じる二重処罰には当たらない。
重要事実
抗告人は、執行猶予の言渡しを受けた後、その猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金に処せられた。これに基づき、刑法26条3号を適用して執行猶予の取消しがなされた。抗告人は、この取消しが憲法39条に違反する(二重の処罰にあたる)として争った。
あてはめ
憲法39条は、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うことを禁じている。これに対し、刑法26条3号による執行猶予の取消しは、前科についての刑の執行を猶予していた特別の恩恵的措置を、後死の犯罪事実という新たな事情に鑑みて撤回する手続である。これは前罪の刑を執行可能にするに留まり、前罪または後罪について重ねて処罰を科すものではない。よって、二重処罰の禁止の理は及ばない。
事件番号: 昭和28(し)97 / 裁判年月日: 昭和29年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条1号による執行猶予の必要的取消しは、一事不再理を定めた憲法39条等の規定に違反せず、合憲である。 第1 事案の概要:被告人は刑の執行猶予期間中にさらに罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられた。これに基づき、刑法26条1号を適用して従前の執行猶予が取り消されたが、被告人は当該取消しが憲法39条に…
結論
刑法26条3号は憲法39条に違反しない。したがって、本件執行猶予の取消しは正当である。
実務上の射程
刑事訴訟法上の執行猶予取消手続の合憲性を基礎付ける射程を持つ。答案上は、執行猶予取消しが「刑の執行に関する処分」であり、「事後的な処罰(刑罰そのもの)」ではないことを示す際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和49(し)110 / 裁判年月日: 昭和49年12月2日 / 結論: 棄却
刑法二六条の二第二号と憲法三九条に違反しないことは、最高裁昭和四一年(し)第五九号同四二年三月八日大法廷決定(刑集二一巻二号四二三頁)の趣旨に照らして明らかである。
事件番号: 昭和49(し)64 / 裁判年月日: 昭和49年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条2号が「保護観察付執行猶予の言渡しを受けた者がその猶予期間中に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき」を執行猶予の裁定的取消事由と定めていることは、憲法39条に違反しない。 第1 事案の概要:本件抗告人は、保護観察付執行猶予の言渡しを受けた後、その猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金刑に処せられ…
事件番号: 昭和35(し)34 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
刑法第二六条第三号は憲法第一一条、第一三条、第三八条、第三九条に違反しない。
事件番号: 昭和49(し)55 / 裁判年月日: 昭和49年6月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条の2第2号に基づく執行猶予の取消しは、憲法31条の罪刑法定主義や憲法39条後段の二重処罰の禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し、刑法26条の2第2号(猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき)に基づき、執行猶予の言…