刑法二六条の二第二号と憲法三九条に違反しないことは、最高裁昭和四一年(し)第五九号同四二年三月八日大法廷決定(刑集二一巻二号四二三頁)の趣旨に照らして明らかである。
刑法二六条の二第二号と憲法三九条
刑法26条の2第2号,憲法39条
判旨
刑法26条の2第2号に基づく執行猶予の取消しは、既に言い渡された刑の執行を可能にする手続に過ぎず、憲法39条が禁じる二重処罰には当たらない。
問題の所在(論点)
刑法26条の2第2号に基づく執行猶予の取消しが、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものとして、憲法39条に違反するか。
規範
憲法39条後段が禁じる「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われること」とは、一つの罪に対して二つの刑罰を科すことを指す。これに対し、執行猶予の取消しは、猶予されていた刑の執行を復活させる制度であり、新たな刑罰を科すものではない。
重要事実
申立人(抗告人)に対し、刑法26条の2第2号(執行猶予中にさらに罪を犯し、罰金に処せられたとき等の裁量的取消事由)に該当するとして、執行猶予を取り消す決定がなされた。これに対し、申立人は、執行猶予の取消しが憲法39条の一事不再理(二重処罰の禁止)に違反すると主張して特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和49(し)64 / 裁判年月日: 昭和49年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条2号が「保護観察付執行猶予の言渡しを受けた者がその猶予期間中に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき」を執行猶予の裁定的取消事由と定めていることは、憲法39条に違反しない。 第1 事案の概要:本件抗告人は、保護観察付執行猶予の言渡しを受けた後、その猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金刑に処せられ…
あてはめ
執行猶予の取消しは、当初の判決で言い渡された刑の執行を猶予する恩恵的措置を撤回し、本来の刑を執行可能にする手続である。これは、既に確定している刑の執行に関する判断であって、一つの事案について二重に刑罰を科す「二重処罰」には該当しない。したがって、判例(昭和42年3月8日大法廷決定)の趣旨に照らせば、本件取消規定が憲法39条に違反しないことは明らかである。
結論
執行猶予の取消しは憲法39条に違反しない。したがって、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
執行猶予の取消規定の合憲性を明確にした判例である。答案上は、憲法39条の「二重処罰」の定義(刑事責任の追及が終了した後に再び処罰すること)を確認する際の傍証や、刑法上の執行猶予制度の法的性質を説明する際に活用できる。
事件番号: 昭和49(し)55 / 裁判年月日: 昭和49年6月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条の2第2号に基づく執行猶予の取消しは、憲法31条の罪刑法定主義や憲法39条後段の二重処罰の禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し、刑法26条の2第2号(猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき)に基づき、執行猶予の言…
事件番号: 昭和51(し)127 / 裁判年月日: 昭和51年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条3号による執行猶予の取消しは、憲法39条の「二重の処罰(二重処罰の禁止)」に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、執行猶予の言渡しを受けた後、その猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金に処せられた。これに基づき、刑法26条3号を適用して執行猶予の取消しがなされた。抗告人は、この取消しが憲法…
事件番号: 昭和28(し)97 / 裁判年月日: 昭和29年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条1号による執行猶予の必要的取消しは、一事不再理を定めた憲法39条等の規定に違反せず、合憲である。 第1 事案の概要:被告人は刑の執行猶予期間中にさらに罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられた。これに基づき、刑法26条1号を適用して従前の執行猶予が取り消されたが、被告人は当該取消しが憲法39条に…
事件番号: 昭和42(し)32 / 裁判年月日: 昭和42年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予の取消しは、執行猶予の判決に内在する予定された事態の実現にすぎず、憲法39条が禁じる二重処罰には当たらない。また、取消しの効果は取消決定の告知によって生じる。 第1 事案の概要:被請求人は刑の執行猶予の言渡しを受けたが、保護観察期間中に情状の重い遵守事項違反があった。これを受け、裁判所…