執行猶予の取消の要件を定めた刑法二六条の二第二号の規定が不明確であつて罪刑法定主義に違反するとの主張が欠前提とされた事例
憲法31条
判旨
刑法26条の2第2号に基づく執行猶予の取消しは、憲法31条の罪刑法定主義や憲法39条後段の二重処罰の禁止には違反しない。
問題の所在(論点)
刑法26条の2第2号による執行猶予の取消規定が、憲法31条(罪刑法定主義・規定の明確性)および憲法39条後段(二重処罰の禁止)に違反するか。
規範
1. 罪刑法定主義(憲法31条)は犯罪の構成要件と刑罰をあらかじめ規定することを要求するが、執行猶予の取消要件は犯罪そのものの構成要件を定めるものではない。 2. 執行猶予の取消しは、一度猶予された刑の執行を有効にする手続に過ぎず、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものではないため、二重処罰の禁止(憲法39条後段)には抵触しない。
重要事実
被告人に対し、刑法26条の2第2号(猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき)に基づき、執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定がなされた。これに対し弁護人は、同条項の規定が不明確であり憲法31条に違反する点、および一度行われた執行猶予付判決を覆すことが憲法39条後段に違反する点などを理由として抗告を申し立てた。
あてはめ
1. 憲法31条違反の主張について、刑法26条の2第2号は執行猶予の取消要件を定めたものにすぎず、いかなる行為が犯罪となり、いかなる刑罰が科されるかという「犯罪の構成要件」を定める規定ではないため、罪刑法定主義の射程外である。 2. 憲法39条違反の主張については、先行判例(最決昭42.3.8)の趣旨に照らし、執行猶予の取消しは確定した刑罰権の行使態様を変更する手続にすぎず、新たな刑事責任を課すものではないと解される。
事件番号: 昭和49(し)64 / 裁判年月日: 昭和49年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条2号が「保護観察付執行猶予の言渡しを受けた者がその猶予期間中に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき」を執行猶予の裁定的取消事由と定めていることは、憲法39条に違反しない。 第1 事案の概要:本件抗告人は、保護観察付執行猶予の言渡しを受けた後、その猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金刑に処せられ…
結論
刑法26条の2第2号による執行猶予の取消しは合憲であり、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
執行猶予取消しの合憲性を肯定した判例であり、答案上は憲法31条や39条の適用範囲を論じる際の「犯罪の構成要件や刑罰そのものではない手続的規定」の性質決定の論拠として利用できる。
事件番号: 昭和49(し)110 / 裁判年月日: 昭和49年12月2日 / 結論: 棄却
刑法二六条の二第二号と憲法三九条に違反しないことは、最高裁昭和四一年(し)第五九号同四二年三月八日大法廷決定(刑集二一巻二号四二三頁)の趣旨に照らして明らかである。
事件番号: 昭和51(し)127 / 裁判年月日: 昭和51年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条3号による執行猶予の取消しは、憲法39条の「二重の処罰(二重処罰の禁止)」に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、執行猶予の言渡しを受けた後、その猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金に処せられた。これに基づき、刑法26条3号を適用して執行猶予の取消しがなされた。抗告人は、この取消しが憲法…
事件番号: 昭和52(し)28 / 裁判年月日: 昭和52年4月13日 / 結論: 棄却
一 刑法二六条の二第二号が憲法三九条に違反しないことは、昭和四一年(し)第五九号同四二年三月八日大法廷決定(刑集二一巻二号四二三頁)の趣旨に照らして明らかである。(昭和四九年(し)第一一〇号同年一二月二日第二小法廷決定と同旨) 二 刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が口頭弁論を開くことなく非公開の裁判をしても憲法三一条に…
事件番号: 昭和42(し)32 / 裁判年月日: 昭和42年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予の取消しは、執行猶予の判決に内在する予定された事態の実現にすぎず、憲法39条が禁じる二重処罰には当たらない。また、取消しの効果は取消決定の告知によって生じる。 第1 事案の概要:被請求人は刑の執行猶予の言渡しを受けたが、保護観察期間中に情状の重い遵守事項違反があった。これを受け、裁判所…