刑法第二六条第三号は憲法第一一条、第一三条、第三八条、第三九条に違反しない。
刑法第二六条第三号と憲法第一一条、第一三条、第三八条、第三九条。
刑法26条3号,刑訴法349条,憲法11条,憲法13条,憲法38条,憲法39条
判旨
刑法26条3号に基づき、執行猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことを理由に執行猶予を取り消すことは、憲法39条の二重処罰の禁止に抵触しない。
問題の所在(論点)
執行猶予の言渡し前に犯した罪により禁錮以上の刑に処せられたことを理由に、執行猶予を取り消す旨を定めた規定(刑法26条3号)は、憲法39条の二重処罰の禁止に違反するか。
規範
憲法39条が禁じるのは、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うことである。執行猶予の取消しは、既に言い渡されていた刑の執行を可能にする手続きに過ぎず、新たな刑罰を科すものではないため、二重処罰には当たらない。
重要事実
抗告人は、執行猶予の言渡しを受ける前に犯した罪について、その猶予期間中に禁錮以上の刑に処せられた。これに対し、裁判所が刑法26条3号(現行法。当時は旧刑法26条3号)を適用して執行猶予の取消しを決定したところ、抗告人はこれが一事不再理(憲法39条)等に反すると主張して特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和51(し)127 / 裁判年月日: 昭和51年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条3号による執行猶予の取消しは、憲法39条の「二重の処罰(二重処罰の禁止)」に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、執行猶予の言渡しを受けた後、その猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金に処せられた。これに基づき、刑法26条3号を適用して執行猶予の取消しがなされた。抗告人は、この取消しが憲法…
あてはめ
最高裁判所大法廷昭和33年2月10日決定の趣旨に照らせば、執行猶予の取消しは、猶予されていた刑の執行を単に復活させるものであり、確定した刑罰の内容を事後的に変更したり、同一の犯罪について重ねて処罰したりするものではない。したがって、憲法39条のほか、11条、13条、31条、38条のいずれの憲法規定にも違反しないと解される。
結論
刑法26条3号は憲法39条に違反せず、同条に基づく執行猶予の取消しは適憲である。
実務上の射程
刑事法における二重処罰禁止(憲法39条)の射程を画定する際、刑罰の執行段階における不利益処分(執行猶予取消し、仮釈放取消し等)が「新たな処罰」に該当しないことを論証するための基礎として活用できる。
事件番号: 昭和25(し)55 / 裁判年月日: 昭和26年10月6日 / 結論: 棄却
前犯に対する確定判決を動かしたり或は前犯に対し、重ねて刑罰を科する趣旨のものでもない刑法第二六条第一項第一号の規定が憲法第三九条その他の規定に違反しないことは、当裁判所昭和二四年(れ)第一二六〇号同年一二月二一日大法廷判決、昭和二四年(れ)第一四〇四号、同二五年三月一五日大法廷判決の趣旨に徴し疑をいれないところである。…
事件番号: 昭和49(し)55 / 裁判年月日: 昭和49年6月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条の2第2号に基づく執行猶予の取消しは、憲法31条の罪刑法定主義や憲法39条後段の二重処罰の禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し、刑法26条の2第2号(猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき)に基づき、執行猶予の言…
事件番号: 昭和49(し)64 / 裁判年月日: 昭和49年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条2号が「保護観察付執行猶予の言渡しを受けた者がその猶予期間中に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき」を執行猶予の裁定的取消事由と定めていることは、憲法39条に違反しない。 第1 事案の概要:本件抗告人は、保護観察付執行猶予の言渡しを受けた後、その猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金刑に処せられ…
事件番号: 昭和28(し)97 / 裁判年月日: 昭和29年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条1号による執行猶予の必要的取消しは、一事不再理を定めた憲法39条等の規定に違反せず、合憲である。 第1 事案の概要:被告人は刑の執行猶予期間中にさらに罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられた。これに基づき、刑法26条1号を適用して従前の執行猶予が取り消されたが、被告人は当該取消しが憲法39条に…