刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が書面審理によって裁判をすることが憲法三一条、三二条、三七条一項に違反しないとされた事例
憲法31条,憲法32条,憲法37条1項,刑法26条,刑法26条2号,刑訴法349条の2第5項,刑訴法426条
判旨
刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審において、口頭弁論を開くことなく書面審理によって裁判を行うことは、憲法31条、32条、37条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審において、口頭弁論を開かずに書面審理のみで決定を下すことが、憲法31条、32条、37条1項に違反するか。
規範
刑の執行猶予言渡取消手続は、既に確定した刑罰権の具体的な執行の適否を決する手続であり、被告人の有罪・無罪を確定する刑事裁判そのものではない。したがって、同手続の抗告審において、口頭弁論を経ず書面審理のみで裁判を行うことは憲法上の適正手続や裁判を受ける権利、刑事被告人の諸権利に抵触せず、合憲である。
重要事実
被告人に対し、刑の執行猶予言渡しの取消しがなされた。これに対し被告人が抗告を申し立てたところ、抗告審において口頭弁論が開かれることなく、書面審理のみによって抗告棄却の裁判がなされた。被告人は、かかる手続が憲法31条(適正手続)、32条(裁判を受ける権利)、37条1項(公平な裁判所の迅速な公開裁判)に違反すると主張して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
執行猶予の取消手続は、実体的な刑罰権の存否を確定させる刑事訴訟そのものではなく、確定判決による執行の猶予を維持すべきか否かを判断する付随的な手続である。最高裁大法廷判決(昭和42年7月5日)の趣旨に照らせば、このような性質の手続においては、必ずしも口頭弁論を要せず、書面審理によって裁判を行っても憲法が保障する防御権や裁判を受ける権利の本質を損なうものではないと解される。したがって、本件において口頭弁論が開かれなかったことは正当である。
事件番号: 昭和42(し)36 / 裁判年月日: 昭和42年8月1日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が口頭弁論を開くことなく非公開の裁判をしても憲法第三七条第一項に違反しないことは、昭和四〇年(し)第九八号同四二年七月五日大法廷決定の趣旨に照らし明らかである。
結論
執行猶予言渡取消手続の抗告審における書面審理は合憲であり、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
刑事手続における口頭弁論の必要性が問われる事案において、実体審理と執行段階の手続を区別する際の根拠として用いる。刑事訴訟法上の「決定」でなされる手続一般における審理方式の合理性を説明する際に、本判例を射程に含めることが可能である。
事件番号: 昭和52(し)28 / 裁判年月日: 昭和52年4月13日 / 結論: 棄却
一 刑法二六条の二第二号が憲法三九条に違反しないことは、昭和四一年(し)第五九号同四二年三月八日大法廷決定(刑集二一巻二号四二三頁)の趣旨に照らして明らかである。(昭和四九年(し)第一一〇号同年一二月二日第二小法廷決定と同旨) 二 刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が口頭弁論を開くことなく非公開の裁判をしても憲法三一条に…
事件番号: 昭和51(し)74 / 裁判年月日: 昭和51年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護人選任権および口頭弁論を請求する権利の侵害が認められない限り、適正な手続を定めた憲法31条および裁判を受ける権利を定めた32条に違反しない。 第1 事案の概要:申立人が、自己の弁護人選任権および口頭弁論を請求する権利が侵害されたとして、憲法31条および32条違反を理由に特別抗告を申し立てた事案…
事件番号: 平成12(し)67 / 裁判年月日: 平成12年4月21日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】保護観察中の遵守事項違反を理由とする執行猶予取消しの決定において、刑訴規則222条の7第1項所定の告知及び確認手続を経ないことは、対象者の防御権を侵害する違法な手続である。 第1 事案の概要:覚せい剤取締法違反で保護観察付執行猶予判決を受けた申立人は、猶予期間中に複数の罪を犯して公訴提起された。検…
事件番号: 昭和55(し)93 / 裁判年月日: 昭和55年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の理由として憲法31条違反を主張しても、その実質が単なる法令違反の主張にすぎない場合は、刑事訴訟法433条の抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し、憲法31条(適正手続きの保障)に違反する旨を主張して最高裁判所に特別抗告を申し立てた。しかし、その主張の具体的内容…