刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が口頭弁論を開くことなく非公開の裁判をしても憲法第三七条第一項に違反しないことは、昭和四〇年(し)第九八号同四二年七月五日大法廷決定の趣旨に照らし明らかである。
刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が口頭弁論を開くことなく非公開の裁判をすることと憲法第三七条第一項
憲法37条1項,憲法82条1項,刑法26条,刑法26条ノ2,刑訴法349条,刑訴法419条
判旨
刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審において、口頭弁論を開くことなく非公開の裁判を行うことは、憲法37条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審において、口頭弁論を開かず非公開で裁判を行うことが、憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」に反しないか。
規範
憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成を持つ裁判所による裁判を意味する。また、特定の刑事手続(執行猶予取消等)の抗告審において、口頭弁論を経ない非公開の裁判を行うことは、同条項の趣旨に反しない。
重要事実
被告人に対し刑の執行猶予の言渡しを取り消す決定がなされ、これに対する即時抗告が申し立てられた。抗告審(原裁判所)は、口頭弁論を開くことなく非公開の手続によって当該即時抗告を棄却した。これに対し、抗告人は、口頭弁論を経ない非公開の裁判は公平な裁判とは言えず、憲法37条1項に違反するとして特別抗告を申し立てた。
事件番号: 平成1(し)10 / 裁判年月日: 平成元年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審において、口頭弁論を開くことなく書面審理によって裁判を行うことは、憲法31条、32条、37条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し、刑の執行猶予言渡しの取消しがなされた。これに対し被告人が抗告を申し立てたところ、抗告審において口頭弁論が開かれることなく、…
あてはめ
憲法37条1項の「公平」の要件は裁判所の組織・構成の客観性を指すものであり、審理の公開や口頭弁論の実施を直ちに要求するものではない。本件のような執行猶予取消手続の抗告審においては、大法廷決定の趣旨に照らし、書面審理を中心とした非公開の手続によることが許容される。したがって、口頭弁論を開かずに裁判を行った原審の手続に憲法違反の瑕疵は認められない。
結論
刑の執行猶予取消の抗告審で口頭弁論を開かないことは憲法37条1項に違反しないため、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
刑事手続における審理の公開や対審構造の要否が問題となる場面(特に付随的な裁判手続)での憲法適合性を論じる際の根拠として活用できる。裁判所の「公平性」の定義についても引用可能である。
事件番号: 昭和52(し)28 / 裁判年月日: 昭和52年4月13日 / 結論: 棄却
一 刑法二六条の二第二号が憲法三九条に違反しないことは、昭和四一年(し)第五九号同四二年三月八日大法廷決定(刑集二一巻二号四二三頁)の趣旨に照らして明らかである。(昭和四九年(し)第一一〇号同年一二月二日第二小法廷決定と同旨) 二 刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が口頭弁論を開くことなく非公開の裁判をしても憲法三一条に…
事件番号: 昭和42(し)32 / 裁判年月日: 昭和42年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予の取消しは、執行猶予の判決に内在する予定された事態の実現にすぎず、憲法39条が禁じる二重処罰には当たらない。また、取消しの効果は取消決定の告知によって生じる。 第1 事案の概要:被請求人は刑の執行猶予の言渡しを受けたが、保護観察期間中に情状の重い遵守事項違反があった。これを受け、裁判所…
事件番号: 昭和26(し)76 / 裁判年月日: 昭和26年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予の取消決定が迅速を欠いたとしても、そのこと自体は決定の効力に影響を及ぼさず、憲法37条1項の「公平な裁判所の裁判」は裁判所の組織構成に関するものであって個別の事件処理の当否を指すものではない。 第1 事案の概要:抗告人は、昭和23年に窃盗罪により懲役1年・執行猶予3年の判決を受けたが、…
事件番号: 昭和51(し)74 / 裁判年月日: 昭和51年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護人選任権および口頭弁論を請求する権利の侵害が認められない限り、適正な手続を定めた憲法31条および裁判を受ける権利を定めた32条に違反しない。 第1 事案の概要:申立人が、自己の弁護人選任権および口頭弁論を請求する権利が侵害されたとして、憲法31条および32条違反を理由に特別抗告を申し立てた事案…