判旨
刑の執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定に対しては即時抗告のみが許容され、即時抗告の提起期間経過後に通常の抗告を行うことはできない。
問題の所在(論点)
刑の執行猶予取消決定に対する不服申立について、即時抗告の期間制限にかかわらず通常の抗告を選択して行うことが認められるか。
規範
刑訴法上、即時抗告をなし得る旨の規定がある裁判(刑訴法349条の2第2項等)については、不服申立の方法として即時抗告のみが認められ、当事者の意思によって即時抗告と通常の抗告を選択することはできない。また、即時抗告の提起期間(同法422条)を経過した後に通常の抗告をなすことも許されない。
重要事実
被告人に対し刑の執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定がなされた。これに対し、不服申立人が即時抗告の提起期間(3日)を経過した後に、通常の抗告(または即時抗告との選択的行使)を主張して不服を申し立て、その可否が争点となった。
あてはめ
刑訴法349条の2第2項(旧349条)は執行猶予取消決定に対し即時抗告をなし得る旨を明記し、同法422条はその提起期間を3日と定めている。本件において、抗告人は即時抗告と通常の抗告に選択の自由がある旨、および期間経過後も通常の抗告が可能である旨を主張するが、これは法が即時抗告という限定された不服申立手段を設けた趣旨に反する。即時抗告が規定されている以上、期間制限のない通常の抗告の介入を認める余地はない。
結論
執行猶予取消決定に対し、即時抗告の提起期間経過後に通常の抗告をなすことはできず、抗告は棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事訴訟法上の不服申立において「即時抗告をすることができる」と規定されている場合、それが排他的な手段であることを示す。期間制限(3日、現在は5日)の厳格性を肯定する文脈で、不服申立の適法性を論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和54(し)29 / 裁判年月日: 昭和54年3月29日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予言渡取消決定に関する特別抗告の係属中に執行猶予期間に相当する期間が経過したことは、すでに発生している執行猶予取消の効果に影響しない。
事件番号: 昭和50(し)109 / 裁判年月日: 昭和51年2月20日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予言渡の取消決定に対する即時抗告棄却決定が執行猶予期間経過前に申立人に告知されたことにより、執行猶予云渡の取消の効果が発生したものであつて、本件特別抗告係属中に右猶予期間が満了したことは、原決定を取り消すべき事由とはならない。
事件番号: 昭和56(し)76 / 裁判年月日: 昭和56年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予の言渡しを取り消す決定の効力は、抗告提起期間の経過または抗告棄却決定の確定によって生じるため、特別抗告の係属中に猶予期間が満了したとしても、原決定に誤りがない限り、期間満了による刑の言渡しの失効(刑法27条)は妨げられない。 第1 事案の概要:執行猶予の言渡しを取り消す旨の原決定の告知…
事件番号: 昭和56(し)44 / 裁判年月日: 昭和56年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定が告知された時点で猶予期間が満了していなければ、その後の特別抗告の係属中に猶予期間が経過したとしても、刑法27条による刑の言渡しの失効は生じない。 第1 事案の概要:被告人に対し執行猶予が付された刑の言渡しがあった。その後、執行猶予の取消事由が生じたため、裁判所は…
事件番号: 昭和49(し)6 / 裁判年月日: 昭和49年2月7日 / 結論: 棄却
本件においては、刑の執行猶予言渡の取消決定に対する即時抗告棄却決定が執行猶予期間経過前に申立人に対し告知されたことにより、執行猶予言渡の取消の効果が発生したものであつて、その後本件特別抗告の係属中に右猶予期間が満了したことは、原決定を取り消すべき理由とはならない(当裁判所昭和四〇年(し)第二一号同年九月八日大法廷決定・…