執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定送達後特別抗告係属中猶予期間が満了した場合と執行猶予取消の効果 (反対意見がある)
刑法27条,刑訴法424条
判旨
刑の執行猶予の言渡しを取り消す決定の効力は、抗告提起期間の経過または抗告棄却決定の確定によって生じるため、特別抗告の係属中に猶予期間が満了したとしても、原決定に誤りがない限り、期間満了による刑の言渡しの失効(刑法27条)は妨げられない。
問題の所在(論点)
執行猶予取消決定に対する不服申立(特別抗告)の係属中に執行猶予期間が満了した場合、刑法27条に基づき刑の言渡しが効力を失い、もはや取消決定を維持することができなくなるのか。
規範
執行猶予取消決定の効力発生時期と、刑法27条による「期間満了による刑の言渡しの失効」の関係が問題となる。実務上、取消決定の告知が猶予期間内になされ、その後の不服申立手続中に期間が経過した場合であっても、取消決定自体が適法であれば、遡及的に刑の失効を阻止する効力を有すると解される。
重要事実
執行猶予の言渡しを取り消す旨の原決定の告知があった時点(昭和56年5月28日)では、まだ執行猶予期間は満了していなかった。しかし、被告人がこれに対し特別抗告を申し立て、最高裁判所に係属している最中(同年6月1日)に、当該猶予期間が経過した。
あてはめ
本件における多数意見は、抗告理由が実質的に事実誤認や単なる法令違反にすぎず、刑訴法433条の抗告理由に当たらないと判断した。これは、不服申立手続中に期間が経過したとしても、原決定がなされた時点で猶予期間内であり、かつその内容に憲法違反等の重大な事由がない限り、期間満了を理由に直ちに取消決定を無効とはしない立場を前提としている。反対意見(団藤重光裁判官)は期間満了による失効を認めるべきとするが、法廷の多数意見はこれを採用せず、手続の継続を肯定した。
事件番号: 昭和56(し)44 / 裁判年月日: 昭和56年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定が告知された時点で猶予期間が満了していなければ、その後の特別抗告の係属中に猶予期間が経過したとしても、刑法27条による刑の言渡しの失効は生じない。 第1 事案の概要:被告人に対し執行猶予が付された刑の言渡しがあった。その後、執行猶予の取消事由が生じたため、裁判所は…
結論
本件抗告を棄却する。執行猶予取消決定の告知後に猶予期間が経過しても、決定自体に正当な理由がある限り、特別抗告を棄却し取消を維持すべきである。
実務上の射程
本決定は、執行猶予取消手続における期間満了の限界を画したものである。答案上では、取消決定が期間内になされている限り、その後の不服申立期間の経過や抗告審の審理中に期間が満了したとしても、決定の効力が否定されるものではないと論じる際の根拠となる。ただし、決定告知自体が期間後であった場合には適用されない点に注意を要する。
事件番号: 昭和56(し)56 / 裁判年月日: 昭和56年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予取消決定に対する特別抗告の係属中に猶予期間が満了した場合であっても、決定告知時に期間が満了していなければ、決定の効力は失われず、抗告審は裁判を継続できる。 第1 事案の概要:本件において、原裁判所による執行猶予取消決定の告知が行われたのは昭和56年4月7日であり、この時点では執行猶予期間は…
事件番号: 昭和56(し)141 / 裁判年月日: 昭和56年11月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定が、猶予期間内に告知された場合、その後に特別抗告期間が経過しても取消しの効果は妨げられない。 第1 事案の概要:申立人は刑の執行猶予の言渡しを受けたが、後にその取消決定がなされた。これに対し申立人は即時抗告を申し立てたが、昭和56年10月12日に即時抗告…
事件番号: 昭和49(し)6 / 裁判年月日: 昭和49年2月7日 / 結論: 棄却
本件においては、刑の執行猶予言渡の取消決定に対する即時抗告棄却決定が執行猶予期間経過前に申立人に対し告知されたことにより、執行猶予言渡の取消の効果が発生したものであつて、その後本件特別抗告の係属中に右猶予期間が満了したことは、原決定を取り消すべき理由とはならない(当裁判所昭和四〇年(し)第二一号同年九月八日大法廷決定・…
事件番号: 昭和43(し)46 / 裁判年月日: 昭和43年7月11日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予の言渡取消決定に対する即時抗告棄却決定が刑の執行猶予期間経過前に刑の言渡を受けた者に告知された場合には、執行猶予の言渡取消の効果が発生するのであつて、その後右即時抗告棄却決定に対する特別抗告が最高裁判所に係属中に右猶予期間が満了しても、そのこと自体によつては右取消の効果は左右されない。