特別抗告の係属中に執行猶予期間が満了した場合における執行猶予の取消につき反対意見が付された事例
刑法26条の2第2号、刑訴法424条
判旨
執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定が告知された時点で猶予期間が満了していなければ、その後の特別抗告の係属中に猶予期間が経過したとしても、刑法27条による刑の言渡しの失効は生じない。
問題の所在(論点)
執行猶予取消決定の告知後、特別抗告の審理中に執行猶予期間が経過した場合、刑法27条に基づき刑の言渡しは失効し、取消決定は効力を失うか。
規範
刑の執行猶予の取消決定がなされた場合、その効力は決定の告知によって生じる。刑法27条が定める「猶予の期間を経過したとき」に刑の言渡しが効力を失う規定は、有効な取消決定がなされないまま期間が満了することを前提としており、取消決定後の抗告審継続中に期間が経過したとしても、同条による失効は認められない。
重要事実
被告人に対し執行猶予が付された刑の言渡しがあった。その後、執行猶予の取消事由が生じたため、裁判所は昭和56年3月23日に執行猶予を取り消す決定(原決定)を告知した。この告知時点では、執行猶予期間はまだ満了していなかった。被告人はこの決定を不服として最高裁判所に特別抗告を申し立てたが、その審理継続中の同年3月28日に、当初定められていた執行猶予期間が経過した。被告人側は、期間経過により刑の言渡しが失効したと主張した。
あてはめ
本件では、原決定(執行猶予取消決定)の告知があった昭和56年3月23日の時点において、本件執行猶予期間はまだ満了していなかった。取消決定の告知により、猶予期間満了による失効(刑法27条)を阻止する効果が確定的に生じている。したがって、その後の特別抗告の係属中に形式的な期間の経過(昭和56年3月28日の到来)があったとしても、それは既に有効に告知された取消決定の効果に影響を及ぼすものではない。抗告趣意は単なる法令違反の主張にとどまり、刑訴法433条の抗告理由に該当しない。
事件番号: 昭和56(し)76 / 裁判年月日: 昭和56年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予の言渡しを取り消す決定の効力は、抗告提起期間の経過または抗告棄却決定の確定によって生じるため、特別抗告の係属中に猶予期間が満了したとしても、原決定に誤りがない限り、期間満了による刑の言渡しの失効(刑法27条)は妨げられない。 第1 事案の概要:執行猶予の言渡しを取り消す旨の原決定の告知…
結論
本件抗告を棄却する。猶予期間満了前に取消決定が告知されている以上、抗告審継続中に期間が経過しても刑の言渡しは失効しない。
実務上の射程
執行猶予の取消しが問題となる事案において、期間満了の間際であっても、期間内に取消決定が告知されれば、その後の上訴手続中に期間が経過しても執行猶予の取消しは有効に維持される。答案上は、刑法27条の「期間を経過したとき」の意義について、取消決定がないことを条件とする趣旨であると解釈する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和56(し)56 / 裁判年月日: 昭和56年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予取消決定に対する特別抗告の係属中に猶予期間が満了した場合であっても、決定告知時に期間が満了していなければ、決定の効力は失われず、抗告審は裁判を継続できる。 第1 事案の概要:本件において、原裁判所による執行猶予取消決定の告知が行われたのは昭和56年4月7日であり、この時点では執行猶予期間は…
事件番号: 昭和56(し)141 / 裁判年月日: 昭和56年11月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定が、猶予期間内に告知された場合、その後に特別抗告期間が経過しても取消しの効果は妨げられない。 第1 事案の概要:申立人は刑の執行猶予の言渡しを受けたが、後にその取消決定がなされた。これに対し申立人は即時抗告を申し立てたが、昭和56年10月12日に即時抗告…
事件番号: 昭和57(し)107 / 裁判年月日: 昭和57年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予取消決定に対する特別抗告の提起期間中に執行猶予期間が満了した場合であっても、刑法27条による刑の言渡しの失効は生じず、取消決定は有効に確定する。 第1 事案の概要:被告人に対し執行猶予が付された判決が確定し、その猶予期間中に執行猶予取消決定がなされた。原決定(取消決定)の告知があった昭和5…
事件番号: 昭和43(し)46 / 裁判年月日: 昭和43年7月11日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予の言渡取消決定に対する即時抗告棄却決定が刑の執行猶予期間経過前に刑の言渡を受けた者に告知された場合には、執行猶予の言渡取消の効果が発生するのであつて、その後右即時抗告棄却決定に対する特別抗告が最高裁判所に係属中に右猶予期間が満了しても、そのこと自体によつては右取消の効果は左右されない。