刑の執行猶予言渡取消決定に関する特別抗告提起期間中に執行猶予期間に相当する期間が経過した場合と右執行猶予取消の効果(反対意見がある)
刑法27条,刑訴法424条
判旨
刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定が、猶予期間内に告知された場合、その後に特別抗告期間が経過しても取消しの効果は妨げられない。
問題の所在(論点)
執行猶予取消決定に対する即時抗告を棄却する決定が、執行猶予期間内に告知された場合、その後の特別抗告提起期間中に猶予期間が経過したことは、当該決定を取り消すべき事由となるか。
規範
刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定は、執行猶予期間が経過する前に申立人に対して告知されれば、その時点で執行猶予取消の効果が発生する。一度発生した取消しの効果は、その後の特別抗告提起期間中または特別抗告審の係属中に猶予期間に相当する期間が経過したとしても、失効することはない。
重要事実
申立人は刑の執行猶予の言渡しを受けたが、後にその取消決定がなされた。これに対し申立人は即時抗告を申し立てたが、昭和56年10月12日に即時抗告棄却決定の告知を受けた。この告知時点では執行猶予期間は満了していなかったが、翌13日の経過をもって猶予期間に相当する期間が満了した。申立人は、特別抗告の提起期間中に期間が満了したことを理由に、取消決定の効力を争った。
あてはめ
本件では、即時抗告棄却決定が告知された昭和56年10月12日の時点において、依然として執行猶予期間中であった。この告知により、適法に執行猶予取消の効果が発生している。したがって、翌日の10月13日に猶予期間に相当する期間が経過したとしても、それは既に発生した取消しの効力を左右するものではない。特別抗告提起期間の経過や特別抗告の有無は、既に生じた取消しの効果を遡及的に無効とするものではないと解される。
事件番号: 昭和56(し)44 / 裁判年月日: 昭和56年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定が告知された時点で猶予期間が満了していなければ、その後の特別抗告の係属中に猶予期間が経過したとしても、刑法27条による刑の言渡しの失効は生じない。 第1 事案の概要:被告人に対し執行猶予が付された刑の言渡しがあった。その後、執行猶予の取消事由が生じたため、裁判所は…
結論
即時抗告棄却決定が猶予期間内に告知された以上、その後の期間経過は原決定を取り消すべき事由とはならず、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
執行猶予期間満了による刑の言渡しの失効(刑法27条)と、取消決定の効力発生時期の関係を画する判例である。答案上は、即時抗告棄却決定が「告知」された時点で取消しの効果が確定的に発生し、その後の期間満了は影響しないという論理で用いる。実務的には、期間満了直前の取消手続において告知のタイミングが決定的な意味を持つことを示す。
事件番号: 昭和43(し)46 / 裁判年月日: 昭和43年7月11日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予の言渡取消決定に対する即時抗告棄却決定が刑の執行猶予期間経過前に刑の言渡を受けた者に告知された場合には、執行猶予の言渡取消の効果が発生するのであつて、その後右即時抗告棄却決定に対する特別抗告が最高裁判所に係属中に右猶予期間が満了しても、そのこと自体によつては右取消の効果は左右されない。
事件番号: 昭和56(し)76 / 裁判年月日: 昭和56年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予の言渡しを取り消す決定の効力は、抗告提起期間の経過または抗告棄却決定の確定によって生じるため、特別抗告の係属中に猶予期間が満了したとしても、原決定に誤りがない限り、期間満了による刑の言渡しの失効(刑法27条)は妨げられない。 第1 事案の概要:執行猶予の言渡しを取り消す旨の原決定の告知…
事件番号: 昭和56(し)56 / 裁判年月日: 昭和56年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予取消決定に対する特別抗告の係属中に猶予期間が満了した場合であっても、決定告知時に期間が満了していなければ、決定の効力は失われず、抗告審は裁判を継続できる。 第1 事案の概要:本件において、原裁判所による執行猶予取消決定の告知が行われたのは昭和56年4月7日であり、この時点では執行猶予期間は…
事件番号: 昭和50(し)109 / 裁判年月日: 昭和51年2月20日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予言渡の取消決定に対する即時抗告棄却決定が執行猶予期間経過前に申立人に告知されたことにより、執行猶予云渡の取消の効果が発生したものであつて、本件特別抗告係属中に右猶予期間が満了したことは、原決定を取り消すべき事由とはならない。