判旨
控訴審が第一審の無罪判決を破棄し、直接証拠調べを行うことなく自判により有罪を言い渡すことは、刑事訴訟法上許容される。
問題の所在(論点)
控訴審が第一審の無罪判決を事実誤認により破棄する場合、自ら直接証拠調べを行うことなく、訴訟記録に基づき有罪の自判をすることが刑事訴訟法上認められるか。特に直接主義・口頭主義との関係が問題となる。
規範
控訴審は事後審としての性格を有するものの、第一審判決に事実誤認があると認める場合には、これを取り消し、自ら事実を認定して自判することが可能である。その際、公判期日において必ずしも改めて直接的な証拠調べを自ら実施しなければならないわけではなく、訴訟記録や第一審で取り調べられた証拠に基づき、経験則に照らして判断を下すことができる。
重要事実
被告人が第一審において無罪判決を受けたのに対し、控訴審(原審)は第一審の証拠の取捨選択が経験則に反し、事実誤認があるとして破棄した。その上で、控訴審は自ら独自の証拠調べを行うことなく、記録上の証拠に基づいて有罪の自判を言い渡した。これに対し弁護人が、直接主義の観点から自判の手続きに瑕疵がある旨を主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、弁護人の主張は実質的に原審の証拠取捨選択が経験則に反するという事実誤認の主張に過ぎず、適法な上告理由に当たらないとした。また、小林裁判官の反対意見(控訴審が有罪とするなら原則差戻すべきであり、自判には直接の事実取調べが必要との見解)を退け、多数意見として原審の手続きに職権で破棄すべき違法(刑訴法411条)は認められないと判断した。これにより、現行法下で記録に基づき自ら有罪を認定する運用を肯定した。
結論
控訴審が直接証拠調べを行わず、記録に基づいて第一審の無罪判決を破棄し有罪を自判することは適法である。本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法400条ただし書に基づく控訴審の自判権限を確認する判例である。答案上は、直接主義の限界として、第一審判決の不合理性を記録上から指摘できる場合には、控訴審による自判が許容される根拠として引用できる。
事件番号: 令和4(あ)680 / 裁判年月日: 令和5年6月20日 / 結論: 棄却
公訴事実と同旨の事実を含む事実経過を認定した上、これを前提に、窃盗の実行の着手があったとは認められず、被告事件が罪とならないときに当たるとして無罪を言い渡した第1審判決について、原判決が、同事実経過等を前提として、窃盗の実行の着手を認めることができる旨の判断を示し、第1審判決には窃盗未遂罪の成立を否定した点において法令…