所論没収が何人に対して為されたかは第一審判決主文の上では明らかでないけれども領置目録の記載によれば主文記載のモルヒネが被告人Aの所有であることが明らかであるから右没収は被告人Aに対して為されたものであることが判る。従つてこの点に対する原審の判断は正当である。(昭和一二年(れ)第一四四二号同年一〇月二九日大審院第三刑事部判決参照。)
主文において何人から没収するかを明示していない判決は違法か
刑法19条
判旨
故意が認められるためには、結果の発生を確実なものとして認識している必要はなく、犯罪事実の発生を容認する「未必の犯意」があれば足りる。
問題の所在(論点)
刑法上の故意(犯意)が認められるためには、結果の発生を確実なものとして認識している必要があるか、あるいは未必的な認識・容認(未必の故意)があれば足りるか。
規範
犯罪の成立に必要な「犯意(故意)」は、確実な認識がある場合に限られず、犯罪事実の発生の可能性を認識し、かつそれを容認しているという「未必の犯意」が認められれば、これを肯定することができる。
重要事実
被告人Eらは、麻薬(モルヒネ)の不法所持等に関連する犯罪事実について起訴された。被告人側は、確定的な故意がなかった旨を主張して上告したが、原判決が挙げた各証拠によれば、被告人が犯罪事実の発生を予見しつつ、それを容認していたとみるべき状況が存在していた。
あてはめ
本件において、被告人Eが犯罪事実をどの程度具体的に認識していたかは判決文上必ずしも明示されていない。しかし、裁判所は「原判決挙示の各証拠」に基づき、被告人に「未必的な犯意」を認めることができると判断した。これは、被告人が犯罪事実の発生を確実なものとは認識していなくとも、その可能性を認識しつつ、あえて行為に及んだという主観的態様を証拠に基づき認定したものである。
結論
被告人に未必の犯意が認められるため、故意(犯意)の存在を肯定した原判決の判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
故意の概念として「未必の故意」を認めることを明示した極めて簡潔な判例である。司法試験においては、故意の定義(38条1項)を述べる際、「罪を犯す意思」とは確定的な認識のみならず、未必の故意(結果発生の認識・予見およびその容認)をも含むことを指摘する際の根拠となる。
事件番号: 昭和26(あ)3612 / 裁判年月日: 昭和28年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】麻薬不法所持罪の成立には、所持の対象となる物が麻薬であることを認識していることが必要であるが、その認識は概括的なもので足り、第一審判決挙示の証拠により当該認識が認められる場合は有罪を維持し得る。 第1 事案の概要:被告人が注射液を所持していたところ、麻薬取締法違反(不法所持)の罪で起訴された。被告…