判旨
麻薬不法所持罪の成立には、所持の対象となる物が麻薬であることを認識していることが必要であるが、その認識は概括的なもので足り、第一審判決挙示の証拠により当該認識が認められる場合は有罪を維持し得る。
問題の所在(論点)
麻薬不法所持罪における故意の成否に関し、対象物が麻薬であることの認識がどの程度必要とされるか、また自白以外の補強証拠が存在するか。
規範
特定の薬物を所持するにあたって、当該物質が特定の名称や化学的性質を有する麻薬であることまでの厳密な認識は不要であり、それが麻薬等の違法な薬物であるとの認識(概括的認識)があれば、故意を認めるに足りる。
重要事実
被告人が注射液を所持していたところ、麻薬取締法違反(不法所持)の罪で起訴された。被告人は、当該注射液が麻薬であるとの認識がなかった旨を主張し、また、第一審が被告人の自白のみによって有罪を認定した旨の違法を主張して上告した。
あてはめ
記録に基づき第一審判決が挙げた証拠を検討すると、被告人が本件注射液を麻薬と知りながら不法に所持した事実は優に認定できる。被告人の自白だけでなく、その他の補強証拠も存在しており、自白のみで有罪とした違法は認められない。したがって、事実誤認や判断遺脱の違法があるとする弁護人の主張は、判決を破棄すべき事由には当たらない。
結論
被告人が対象物を麻薬と認識して所持していた事実は認定可能であり、自白の補強証拠も存在するため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
故意の対象としての客体の認識について、概括的認識で足りることを示す。答案上、薬物犯罪の故意を論じる際に「違法な薬物であることの認識」の程度を具体化する際の根拠として利用できる。
事件番号: 昭和28(あ)1506 / 裁判年月日: 昭和29年4月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の不知、すなわち違法の認識を欠いたとしても、それ自体では犯意(故意)がないものとすることはできない。 第1 事案の概要:上告人は、違法の認識を欠いた場合には犯意(故意)が否定されるべきである旨、また事実誤認や訴訟法違反がある旨を主張して上告した。なお、具体的な犯行事実は本判決文からは不明である…