判旨
法律の不知、すなわち違法の認識を欠いたとしても、それ自体では犯意(故意)がないものとすることはできない。
問題の所在(論点)
刑法38条3項(法律の不知)に関連し、違法の認識が欠けている場合に故意(犯意)が否定されるか。
規範
犯罪の成立において、自己の行為が法律によって禁止されていることを知らなかったとしても、そのことのみをもって故意(犯意)が否定されるものではない。
重要事実
上告人は、違法の認識を欠いた場合には犯意(故意)が否定されるべきである旨、また事実誤認や訴訟法違反がある旨を主張して上告した。なお、具体的な犯行事実は本判決文からは不明であるが、大法廷判決(昭和23年(れ)202号)の判例を踏襲する形で判断された事案である。
あてはめ
本件において弁護人は、違法の認識を欠いたことを理由に犯意がないと主張するが、当裁判所の確立した判例によれば、違法の認識を欠いても犯意なしとはいえない。したがって、上告人の主張は単なる法令違反の主張にすぎず、適法な上告理由に当たらない。
結論
法律の不知は故意を阻却しないため、違法の認識を欠くことを理由に無罪を主張することはできない。
実務上の射程
故意の成立に違法の認識(違法性の意識)の要否が争われる場面で、不要説(あるいは厳格責任説以前の伝統的判例法理)を引用する際の根拠となる。答案上は、刑法38条3項の原則を補強する判例として、簡潔に言及するのが適当である。
事件番号: 昭和24(れ)2552 / 裁判年月日: 昭和26年1月30日 / 結論: 棄却
一 右厚生省令第一条は、「塩酸ヂアセチルモルヒネ及其ノ一切ノ製剤ハ之ヲ所有、使用、破棄、贈与、受贈、分配又ハ輸送スルコトヲ得ズ」と規定しているのであるから、同条は右薬品およびその一切の製剤の所有や使用ばかりでなく、すべての処分行為をも禁止している趣旨であること明らかである。されば、その処分行為は有償であると無償であると…
事件番号: 昭和24(れ)2006 / 裁判年月日: 昭和26年1月30日 / 結論: 棄却
新憲法施行後においても当裁判所は、有毒飲食物等取締令違反被告事件につき、犯罪の構成に必要な事実の認識に欠くるところがなければその事実が法律上禁ぜられていることを知らなかつたとしても、犯意の成立を妨げるものでない旨説示して従前の判例を維持したのである(昭和二三年(れ)第二〇二号同年七月一四日大法廷判決)。そしてその後当裁…