取調請求のあつた証人のある者につき、許否の決定を留保したまま公判が続行されたが、証拠調を終えようとするにあたり、裁判官が反証の取調の請求その他の方法により証拠の証明力を争うことができる旨を告げたのに対し、請求当事者が「他に取調を請求する証拠はない」と述べたときは、右証人の取調請求は放棄されたものと解すべきである。
証拠調の請求が放棄されたものと解される一事例
刑訴法298条,刑訴法308条,刑訴規則190条,刑訴規則204条
判旨
囮捜査が行われた場合であっても、被告人が捜査官の働きかけとは無関係に犯行の意図を有していたのであれば、当該捜査及び公訴提起は適法である。
問題の所在(論点)
捜査官の働きかけにより犯行が行われた「囮捜査」に基づく検挙および公訴提起が、憲法や刑事訴訟法に違反し、無効となるか。
規範
囮捜査が違法となるか否かは、被告人が捜査官による働きかけとは無関係に、元々当該犯行を行う意図を有していたか否かによって判断される。被告人に犯意が認められる場合には、囮捜査に基因する検挙であっても、直ちに違憲・違法となるものではない。
重要事実
被告人らは、麻薬取締官による囮捜査(働きかけ)をきっかけとして麻薬取引を行い、検挙された。第一審および原審は、本件検挙が結果として囮捜査に基因するものであることを認めつつも、被告人らには麻薬取締官の働きかけとは無関係に、以前から麻薬取引を行う意図があったと認定した。
あてはめ
本件において、被告人らは麻薬取締官の働きかけを受ける以前から、自律的に麻薬取引を行う意図を有していたと認められる。このような「犯意誘発型」ではない「機会提供型」に近い事案においては、捜査官の働きかけは犯行のきっかけに過ぎず、被告人の自由な意思に基づく犯行といえる。したがって、囮捜査に基因する検挙であっても、実質的な違法性は認められない。
結論
被告人らに当初から犯意が認められる以上、本件捜査および検挙に違憲・違法の不当はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、囮捜査の適法性判断において「犯意の有無」を重視する立場(犯意誘発型か機会提供型か)を示した初期の重要判例である。司法試験においては、現在の通説的見解である「捜査の必要性」や「相当性(手段の妥当性)」といった要素を論じる際、その前提となる犯意の有無を認定する基準として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)5682 / 裁判年月日: 昭和29年2月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】いわゆるおとり捜査の適法性に関し、捜査官による誘発があったとしても、被告人が自由意思により犯行に及んだと認められる場合には、捜査官の誘発によるものとはいえず適法である。 第1 事案の概要:被告人B及びCは、物件の所持について犯意を有していたところ、捜査官憲から取引の働きかけを受けた。被告人らはこの…