判旨
いわゆるおとり捜査の適法性に関し、捜査官による誘発があったとしても、被告人が自由意思により犯行に及んだと認められる場合には、捜査官の誘発によるものとはいえず適法である。
問題の所在(論点)
捜査官の働きかけによって犯罪が行われた場合(おとり捜査)、どのような要件を満たせば「捜査官の誘発」によるものとして違法とならず、適法とされるか。
規範
捜査官の働きかけがあったとしても、被告人が犯意(所持の意思等)を有しており、かつ、自由な意思に基づいて取引に参加したと認められる場合には、当該捜査は捜査官の誘発によるものとはいえず、違法な捜査には当たらない。
重要事実
被告人B及びCは、物件の所持について犯意を有していたところ、捜査官憲から取引の働きかけを受けた。被告人らはこの働きかけに対し、自らの自由意思に基づいて本件取引に参加し、対象物件を所持するに至った。弁護人は、本件所持が捜査官憲の誘発によるものであり、捜査が違法である旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人らが本件物件を所持するに至った経緯を見ると、被告人らにはあらかじめ所持の犯意が認められる。また、捜査官による働きかけがあったものの、被告人らは自らの自由意思によって取引に参加することを決定している。したがって、本件の所持は捜査官憲によって強制されたり、意思を抑圧されたりして誘発されたものとはいえず、被告人自身の自己決定に基づく犯行であると評価できる。
結論
被告人らの行為は捜査官憲の誘発によるものとは認められず、本件捜査およびそれに基づく公訴事実は適法である。したがって、被告人らの上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、おとり捜査の適法性判断において、犯意の有無と自由意思による参加という主観的側面を重視する基準を示している。司法試験においては、現在の通説的枠組み(「犯意誘発型」か「機会提供型」か)の前段階として、被告人の自由意思が介在している限り違法とはなりにくいことを示す初期の重要判例として位置づけられる。
事件番号: 昭和26(あ)3576 / 裁判年月日: 昭和28年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】おとり捜査が問題となる事案において、被告人が捜査官憲の誘発によって犯罪を犯すに至ったものとは認められない場合には、違法な捜査とは評価されない。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告人Bに対し、何らかの犯罪事実(判決文からは具体的な犯罪名は不明)について起訴がなされた。弁護人は上告趣意において、本件…