判旨
おとり捜査が問題となる事案において、被告人が捜査官憲の誘発によって犯罪を犯すに至ったものとは認められない場合には、違法な捜査とは評価されない。
問題の所在(論点)
捜査機関の働きかけによって犯罪が実行された場合(おとり捜査)における、捜査の適法性の判断基準および限界が問題となる。
規範
捜査機関の側から犯罪を働きかける、いわゆる「おとり捜査」の適法性については、捜査機関による誘発の有無や程度を基準に判断される。被告人が捜査官憲の誘発によって犯罪を犯すに至ったと認められない限り、当該捜査は違法とはならない。
重要事実
被告人Aおよび被告人Bに対し、何らかの犯罪事実(判決文からは具体的な犯罪名は不明)について起訴がなされた。弁護人は上告趣意において、本件が捜査官憲の誘発によって行われたものである旨を主張し、捜査の違法性を争った。
あてはめ
本件記録を精査したところ、被告人両名が捜査官憲の誘発によって本件犯罪を犯すに至ったという事実は認められない。したがって、捜査機関による不当な働きかけがあったとはいえず、公訴提起の前提となる捜査手続に瑕疵は存在しないと解される。
結論
本件捜査は適法であり、本件各上告を棄却する。
実務上の射程
最決昭和28年3月17日は、おとり捜査の適法性について最高裁が初めて触れた判例の一つである。答案上は、犯意誘発型か機会提供型かを区別する際の基礎的な視点として活用できるが、現代の司法試験実務では、より具体的な規範を示した最決平成16年7月12日を主軸に据え、本判決はその歴史的背景や「誘発の有無」の重要性を示す補強材料として用いるのが適切である。
事件番号: 昭和27(あ)5682 / 裁判年月日: 昭和29年2月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】いわゆるおとり捜査の適法性に関し、捜査官による誘発があったとしても、被告人が自由意思により犯行に及んだと認められる場合には、捜査官の誘発によるものとはいえず適法である。 第1 事案の概要:被告人B及びCは、物件の所持について犯意を有していたところ、捜査官憲から取引の働きかけを受けた。被告人らはこの…