第一審判決が被告人の自白に対する補強証拠として採用したAに対する収税官史の顛末書中同人の供述にかかる焼酎の個々の買受の日時、数量は所論指摘のとおりであるが、Aは右のほか昭和二三年三月初旬頃より同年一二月下旬までに数回にわたり被告人から焼酎を買受けたこと、並びに被告人から買受けた焼酎を同二五年三月二日から同月二三日までに六升五合、同年四月一四日より同月二八日までに一斗三升をそれぞれ他に販売した事実を述べているのであるから、たとえ所論のように個々の買受けの日時、数量において一々被告人の自白と一致しないとしても、右供述の全趣旨を綜合すれば自白が架空でないことを保障するに足るのであり、右のような証拠でも憲法三八条三項の要求する自白の補強証拠となり得ることは当裁判所の判例(昭和二三年(れ)六一号同年一一年五日並びに昭和二三年(れ)七七号同二四年五月一八日大法定判決)の趣旨に照らし明らかである。
併合罪たる密造酒の販売の個々の日時、数量等につき補強証拠の内容が自白と一致しない点がある場合でも憲法第三八条第三項に違反しないか
憲法38条3項,刑訴法319条
判旨
自白の補強証拠は、自白にかかる犯罪事実の細部まで一致することを要せず、その全趣旨を総合して自白の真実性を保障するに足りるものであれば足りる。
問題の所在(論点)
自白の内容と補強証拠の内容が、日時や数量といった事実の細部において一致しない場合であっても、当該証拠は自白の補強証拠となり得るか(補強証拠の要否・範囲)。
規範
補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)は、自白に係る事実の全部を証する必要はなく、自白が架空のものでないことを保障するに足りる(真実性の保障)ものであれば足りる。また、補強証拠の内容が自白における個々の日時や数量といった細部と厳密に一致しない場合であっても、証拠の全趣旨を総合して自白の真実性が認められるならば、補強証拠としての適格性を有する。
重要事実
被告人が焼酎を密造・販売したとされる事案において、第一審は収税官吏が作成した買受人Aの供述録取書(顛末書)を補強証拠として採用した。弁護人は、当該供述に現れた個々の焼酎買受の日時や数量が、被告人の自白内容と一致していないため、補強証拠としての資格を欠き、憲法38条3項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、買受人Aの供述には、被告人から数回にわたり焼酎二斗を買い受けたことや、その後の転売事実が含まれている。確かに、個々の買受け日時や数量において被告人の自白と一致しない点は認められるが、供述の全趣旨を総合すれば、被告人が焼酎を販売していたという自白内容が架空でないことを客観的に裏付けているといえる。したがって、細部の不一致は自白の真実性保障という補強法則の趣旨を損なうものではなく、適法な補強証拠として評価される。
結論
自白と補強証拠が細部で一致しなくとも、自白の真実性を保障するに足りるものであれば補強証拠となり得るため、原審の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
補強法則の程度(真実性保障説)を明確にした判例であり、実務上、自白と客観的証拠の間に些細な矛盾があっても、犯罪事実の核心部分で自白の架空性を排除できれば有罪認定が可能であることを示す。答案では、補強証拠の範囲を論じる際の「真実性の保障」の具体化として引用すべきである。
事件番号: 昭和27(あ)461 / 裁判年月日: 昭和28年1月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白の補強証拠は、犯罪事実の全体をくまなく裏付ける必要はなく、自白と相まって犯罪事実全体を肯認できれば足りる。 第1 事案の概要:被告人が犯行を自白した事件において、原審は自白以外に収税官吏作成の差押目録等の証拠を挙示した。弁護人は、これらの証拠では犯罪事実を十分に補強できていないとして、自白の補…