被告人は昭和二六年六月初旬以来米麹二斗五升白米三斗位の蒸米に約水一石位を加えこれを醗酵させて約一石四斗位の醪を作り、うち七斗を蒸溜して酒精分二十三度位の焼酎約一斗九升五合位を製造して他に販売し、残り七斗の醪は同月中旬頃蒸溜して酒精分二十三度位の焼酎約一斗九升五合位を製造して所持しておるところを押えられたと供述している。そして右押収の焼酎は存在しており、その換算酒精分が二十三度六分であることは第一審判決挙示の証拠により肯認し得られるのであるから、被告人の前記供述の全部はこれらの証拠により補強されているものと認められる。
第二回目の酒税法違反についての証拠物件の存在と第一回、第二回違反の自白の補強証拠
酒税法16条,酒税法60条,酒税法3条,酒税法12条,憲法38条3項,刑訴法317条,刑訴法319条2項
判旨
被告人の自白が存在する場合、他の独立した証拠によって自白の内容が架空でないことが確かめられれば、自白を補強する証拠として十分であり、これらを総合して犯罪事実を認定できる。
問題の所在(論点)
被告人が自白した犯罪事実(酒類の密造)について、押収された酒類という物証が、自白の全内容を補強する証拠として十分であり、自白のみによる有罪認定の禁止(憲法38条3項、刑訴法319条2項)に抵触しないかが問題となった。
規範
憲法38条3項及び刑訴法319条2項にいう補強証拠とは、他の独立した証拠により被告人の自白の架空でないことが確かめられれば足り、その自白と相まって犯罪事実を認定し得るものをいう。
重要事実
被告人は、米麹や白米、水を用いて醪を製造し、これを蒸留して酒精分23度程度の焼酎約1斗9升5合を2回にわたり製造した。そのうち一回分は販売し、残りの一回分を所持していたところを押収された。被告人はこれらの事実について自白したが、証拠としては自白のほかに、実際に押収された焼酎が存在し、その酒精分が23.6度であったことが認められた。
あてはめ
被告人は焼酎の製造工程、数量、酒精分について詳細に自白している。これに対し、実際に押収された焼酎という客観的な物証が存在し、その酒精分も自白内容とほぼ合致する(自白23度に対し鑑定23.6度)。この物証により、被告人の自白が架空のものでないことが客観的に裏付けられるといえる。したがって、押収された焼酎は適法な補強証拠となり、自白とあわせて犯罪事実を認定することが可能である。
結論
被告人の自白は押収物等の補強証拠により裏付けられており、自白のみで有罪としたものではないため、憲法・刑訴法に違反しない。
実務上の射程
補強証拠の程度について、実質説(自白の真実性を担保する程度で足りるとする立場)を確認した判例。答案では、補強証拠が犯罪事実の全部を直接証明する必要はなく、自白が架空でないことを担保できれば足りるという規範を提示する際に引用すべきである。
事件番号: 昭和27(あ)79 / 裁判年月日: 昭和28年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみに基づいて有罪とすることは憲法38条3項及び刑訴法319条2項により禁止されるが、第一審判決が挙げた他の証拠を補強証拠として用いている場合には、自白のみによる有罪判決には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が自白のみによって有罪とされたとして、憲法違反を理由に上告した事案である。…