証人が第一審において、所在不明のため、その召喚状不送達となつたときは、証拠調の施行が不能となつたものである。
所在不明による証人召喚状の不送達と証拠調施行の不能
刑訴法62条,刑訴法65条,刑訴法54条,刑訴法304条,刑訴法297条,刑訴規則190条
判旨
被告人の司法警察官に対する供述について任意性を欠くとの主張は、これを認めるべき証跡がない場合には排斥される。また、第一審において所在不明により召喚不能であった証人の証拠調べ等、原審で主張せずその判断を経ていない事項は、適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
被告人の供述に任意性が認められるか、および原審において主張しなかった事項を上告理由とすることができるか(刑事訴訟法319条1項、405条)。
規範
自白の任意性については、記録上これを認めるべき証跡がない限り、任意性を欠くものとして証拠能力を否定することはできない。また、刑事訴訟法405条の上告理由に関して、原審において主張せず、原審の判断を経なかった事項については、原則として適法な上告理由を構成しない。
重要事実
被告人が司法警察官に対して行った供述に関し、弁護人は任意性を欠く旨を主張して上告した。また、第一審において証人Aが所在不明のため召喚状が不送達となり、証拠調べが施行不能であった点についても上告理由として主張されたが、この点は原審(控訴審)において主張されておらず、原審の判断を経ていない事項であった。
あてはめ
供述の任意性については、記録を精査しても任意性を欠くと認めるべき証跡が全く存在しない。したがって、任意性があるものとして証拠能力が肯定される。次に、証人の召喚不能に関する主張については、記録上、第一審で召喚不能であった事実は明らかであるものの、原審において何ら主張がなされておらず、原審による判断も示されていない。このように原審で争点化されなかった事項を上告段階で新たに持ち出すことは、上告審の事後審的性格に照らし許されない。
結論
本件上告を棄却する。被告人の供述には任意性が認められ、また原審で主張しなかった事項に基づく上告は不適法である。
実務上の射程
自白の任意性否定には具体的証跡が必要であることを再確認するものである。また、控訴審で主張しなかった手続違背等を上告理由とする場合には、刑事訴訟法411条(判決に影響を及ぼすべき著しい不正)に該当する場合を除き、原則として門前払いとなることを示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和27(あ)5202 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意において、上告理由となる事由を具体的に示さず控訴趣意を単に援用することは、適法な上告理由の主張として認められない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が上告を提起したが、その上告趣意書において、独自の上告理由を展開することなく控訴審での主張(控訴趣意)を援用するにとどまった。また、その他の主…