第一審判決認定の事実は、所論検察官の被告人に対する供述調書(刑訴三二八条の証拠として取調の請求があり、取調のあつたもの)を除いてもその他の同判決挙示の各証拠により認定することができるのであるから、仮りに所論のごとき違法ありとしても原判決に影響を及ぼさないものである。
綜合認定した証拠の一部に違法なものがあつても判決に影響を及ぼさない一事例
刑訴法321条1項3号,刑訴法328条,刑訴法411条
判旨
違法に収集された証拠が含まれていても、他の証拠によって事実認定が可能であれば、判決に影響を及ぼさないとして原判決を維持することができる。
問題の所在(論点)
証拠収集に違法がある可能性がある場合において、その証拠を除外してもなお他の証拠により有罪判決の基礎となる事実を認定できるとき、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべきか。
規範
訴訟手続き上の違法(特に供述調書の収集過程の違法)が主張される場合であっても、当該証拠を除外した上で、他の適法な証拠によって判決の基礎となる事実を認定することが可能であるならば、その違法は判決に影響を及ぼすものとは認められない。
重要事実
被告人が検察官に対して行った供述調書について、収集過程に違法があるとの主張がなされた事案。第一審判決は当該調書を証拠として採用し、事実認定を行っていた。
あてはめ
本件において、問題とされた検察官作成の被告人供述調書を除外したとしても、第一審判決が挙げたその他の各証拠を精査すれば、同一の事実を認定することが十分に可能である。したがって、仮に弁護人が主張するような調書作成過程の違法が存在したとしても、それは判決の結論を左右するほどの影響を及ぼす重大な違法(判決に影響を及ぼすべき法令違反)には当たらないと評価される。
結論
上告棄却。他の証拠により事実認定が可能である以上、刑訴法411条を適用して原判決を破棄する必要はない。
実務上の射程
証拠排除法則や違法収集証拠排除法則が議論される際、手続的違法が直ちに判決の破棄理由になるわけではなく、「判決への影響」という観点から、証拠の代替可能性が考慮されることを示す実務上の先例として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)6907 / 裁判年月日: 昭和29年5月11日 / 結論: 棄却
控訴審において事実の確定に影響を及ぼさない事由(本件では量刑不当)により第一審判決を破棄して自判する場合に第一審判決の認定した事実を基礎として法令を適用することの正当であることは、当裁判所の判例とするところであるから(昭和二七年(あ)四一七号同二八年一一月一〇日第三小法廷判決〔集七巻一一号二〇五一頁〕、昭和二七年(あ)…