原判決は「Aに對する副檢事の第一、二回聽取書を通じ同書中同人の供述として買受けの日時の點を除き判示同趣旨の記載」を證據に舉示したこと及所論司法警察官の意見書いついて適法の證據調が爲された形跡がないことは所論の通りである。そして同聽取書を調べて見るに司法警察官作成の意見書記載の犯罪事實を讀み聞けたところ、相違なき旨を述べた旨の記載がある從つて右副檢事聽取書の内容は右司法警察官作成の意見書を見なければよくわからない筋合であるから右副檢事聽取書を證據と爲すには同聽取書に引用した司法警察官作成の意見書についてもまた適法の證據調をしなければならない。從つて原判決は副檢事聽取書を證據として舉示したにかかわらず同聽取書に引用した司法警察官作成の意見書について證據調をしない違法があると主張する論旨は理由がある。
副檢事の聽取書中に引用してある司法警察官意見書を適法な證據調を經ないで採證した判決の違法
舊刑訴法338條,舊刑訴法410條13號
判旨
検察官調書が引用する司法警察官作成の意見書の内容が、当該調書の内容を理解するために不可欠な場合、当該意見書についても適法な証拠調べを要する。
問題の所在(論点)
供述調書が他の書面の内容を引用して作成されている場合、当該引用された書面についても個別に適法な証拠調べを行う必要があるか。引用書面が調書の内容理解に不可欠な場合の証拠調べ手続の要否が問題となる。
規範
検察官(または副検事)による聴取書(供述調書)が、他の書面(司法警察官作成の意見書等)を引用する形で作成されている場合、その引用された書面が聴取書の内容を特定・理解するために不可欠な要素となっているときは、当該引用書面についても適法な証拠調べの手続を経なければ、聴取書全体を証拠として採用することはできない。
重要事実
被告人Aに対する副検事の第1回および第2回聴取書には、司法警察官作成の意見書に記載された犯罪事実を読み聞かせたところ、相違ない旨を述べたという内容が記載されていた。原審は、この聴取書を証拠として挙示したが、そこに引用されていた司法警察官作成の意見書については、適法な証拠調べが行われた形跡がなかった。
事件番号: 昭和26(れ)654 / 裁判年月日: 昭和26年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】供述が検察事務官の強制に基づくものであるとの主張があっても、記録上その強制の事実が認められない限り、当該供述録取書の証拠能力は否定されない。自白の任意性に疑いがない以上、憲法違反の問題も生じない。 第1 事案の概要:被告人Aは、第一審および原審の公判廷において、本件の検察事務官による聴取書(供述録…
あてはめ
本件副検事聴取書は、司法警察官作成の意見書に記載された犯罪事実を肯定する形式をとっており、その具体的内容は当該意見書を照らし合わせなければ判明しない関係にある。このような場合、聴取書の供述内容を実質的に構成しているのは引用された意見書の一部といえる。したがって、聴取書を証拠とするためには、その内容を特定する根拠となっている司法警察官作成の意見書についても、公判廷において適法な証拠調べを行う必要がある。
結論
副検事聴取書に引用された司法警察官作成の意見書について証拠調べをせずに、聴取書を証拠として採用した原判決には、証拠調べ手続の違法がある。
実務上の射程
伝聞証拠の証拠能力や証拠調べ手続に関する論点。調書が「別紙の通り」や「意見書記載の事実通り」と引用する場合、その引用先も証拠調べの対象とする必要があるという実務上の教訓を示す。旧刑事訴訟法下の判例だが、現行法下でも証拠調べの適法性(内容の明確化)の観点から射程を有する。
事件番号: 昭和27(あ)4620 / 裁判年月日: 昭和29年5月21日 / 結論: 棄却
第一審判決認定の事実は、所論検察官の被告人に対する供述調書(刑訴三二八条の証拠として取調の請求があり、取調のあつたもの)を除いてもその他の同判決挙示の各証拠により認定することができるのであるから、仮りに所論のごとき違法ありとしても原判決に影響を及ぼさないものである。