判旨
共犯者の供述調書について、被告人及び弁護人が証拠とすることに同意し、取調べに異議がないと述べた場合には、刑事訴訟法326条に基づき証拠能力が認められる。また、改正刑法施行前の取調べにおいて黙秘権告知が欠けていても、直ちに当該調書が違法となるものではない。
問題の所在(論点)
被告人以外の者の供述調書(伝聞証拠)について、被告人側が同意を与えた場合の証拠能力、及び旧法下で黙秘権告知を欠いた調書の適法性が問題となる。
規範
1. 伝聞証拠であっても、被告人及び弁護人が証拠とすることに同意(刑訴法326条1項)し、裁判所が相当と認めたときは、証拠能力を有する。 2. 黙秘権告知(刑訴法198条2項)を義務付ける規定の施行前に行われた供述録取については、告知が欠けていても手続きが違法とされることはない。
重要事実
被告人会社及び相被告人Bが、物品の売買をめぐり価格統制令違反等で起訴された事案。第一審において、検察官が相被告人Bに対する司法警察官及び検察事務官の各聴取書(供述調書)を証拠請求した際、被告人会社の代表者C及びその弁護人は、これら全ての調書を証拠とすることに同意し、異議がない旨を述べた。その後、上告審において被告人側は、相被告人Bの調書について同意していないこと、及び当該調書作成時に黙秘権告知がなされておらず違法であること等を理由に、証拠能力を争った。
あてはめ
1. 証拠同意について:第一審の公判調書の記載によれば、被告人会社代表者及びその弁護人は、検察官が提出した相被告人Bに対する各聴取書のいずれについても、証拠とすることに同意し取調べに異議がない旨を述べている。したがって、伝聞例外としての同意(326条)が成立しており、証拠能力を欠くとはいえない。 2. 黙秘権告知について:記録によれば、当該各聴取書の作成時期は昭和23年8月から11月であり、黙秘権告知を義務付けた現行刑事訴訟法198条2項の施行前である。施行前の適法な手続に基づくものである以上、告知を欠いていることをもって違法と断じることはできない。
結論
本件各聴取書は証拠能力を有し、これに基づき犯罪事実を認定した原判決に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
伝聞証拠の証拠能力が同意(326条)によって付与されるという基本原則を確認する際に引用される。特に、共同被告人の供述について被告人側が明示的に同意した場合、後からその証拠能力を争うことは困難であることを示す。また、法の不遡及の観点から改正前の手続の有効性を判断した事例としても意義がある。
事件番号: 昭和26(れ)654 / 裁判年月日: 昭和26年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】供述が検察事務官の強制に基づくものであるとの主張があっても、記録上その強制の事実が認められない限り、当該供述録取書の証拠能力は否定されない。自白の任意性に疑いがない以上、憲法違反の問題も生じない。 第1 事案の概要:被告人Aは、第一審および原審の公判廷において、本件の検察事務官による聴取書(供述録…