判旨
裁判所が同一の事件に関連する複数の供述のうち、自由心証に基づいて一部を信じ、他を信じなかったとしても、それらが別個の供述である以上、採証法則に反するものではない。共犯者間や売買の当事者間で有罪・無罪の結論が分かれることがあっても、直ちに理由齟齬の違法が生じるわけではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法における自由心証主義に関し、内容が相類似する複数の供述証拠について、ある者の供述を信じ、別の者の供述を信じないという判断をすることが、理由齟齬や採証法則の違反(経験則違反)に当たるか。
規範
裁判所は、証拠の証明力を自由な判断に委ねられており(自由心証主義)、各被告人等の供述が別個のものである以上、その内容が類似していたとしても、証拠ごとに信憑性を判断し、一部を措信して他を排斥することは、特段の事情がない限り許容される。これは、同一事実に関係する買受人と売却人の関係においても同様であり、一方の無罪が他方の無罪を論理的に強制するものではない。
重要事実
被告人らは、漁業会支部を通じて魚類を統制価格を超えて売却したとして起訴された。原審は、一部の被告人(A、F、B)については司法警察官の聴取書や公判供述を証拠として有罪としたが、他の相被告人(G、H、I、J)については、同様の内容を含む聴取書等の証拠を措信せず無罪とした。また、買受人の一人が無罪とされたことを受けて、売却人である被告人らも無罪とされるべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件における証拠は、同じ警察署の司法警察官代理が作成した聴取書や公判調書であり、内容も相類似している。しかし、これらは各被告人及び相被告人が「各々別々にした供述」を記載したものである。したがって、裁判所が自由心証により一方を信じ、他を信じなかったとしても、それは証拠ごとの評価の差異にすぎず、論理的な矛盾はない。また、買受人が無罪とされたからといって、売買の対向関係にある売却人が当然に無罪にならなければならないという推論も成り立たない。
結論
原判決に採証の実験則違反や理由齟齬の違法はなく、被告人らを有罪とした認定は正当であるとして、上告を棄却した。
実務上の射程
実務上、共犯者間で供述の信憑性に差をつけたり、一部の被告人のみを有罪とする判決の妥当性を基礎付ける際に参照される。自由心証主義の限界(論理法則・経験則)を論じる際、各証拠の個別評価が原則であることを示す判例として活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1637 / 裁判年月日: 昭和26年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において事実誤認を主張することは適法な上告理由とはならず、また原判決の事実認定に証拠法則の違反がない限り、上告は棄却される。 第1 事案の概要:被告人が原判決の事実認定に誤りがあるとして上告を申し立てた事案。弁護人は、原審の証拠採用および事実認定に法則違背がある旨を主張し、原審が採用しなかっ…