本件公判請求書記載の事実は被告人提出の自供始末書末尾一覧表記載の各事実を指すものと理解すべきであるから、本件公訴は所論のようにその範囲不明確ということはできない。
公判請求書記載事実の範囲が不明確であるとの主張と起訴事実の表示方
旧刑訴法291条,旧刑訴法410条18号
判旨
公判請求書に記載された事実が、被告人提出の自供始末書の添付書類等を引用する形で特定されている場合、その範囲が客観的に画定できる限り、公訴事実の不特定による違法は認められない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法256条3項が求める「公訴事実の特定」において、起訴状以外の書面(自供始末書の一覧表等)を引用して事実を指定する方法が許容されるか。また、それによって審判対象の範囲が不明確にならないかが問題となる。
規範
公訴事実の特定(刑事訴訟法256条3項)は、被告人の防御の範囲を明確にし、裁判所の審判対象を画定するために必要とされる。公判請求書(起訴状)に直接詳細な事実が記載されていない場合であっても、他の書面(被告人の自供始末書やその一覧表等)を引用・参照することで、審判の対象となる事実の範囲が客観的に一義的なものとして理解できるのであれば、公訴事実は特定されていると解すべきである。
重要事実
検察官が公判を請求する際、公判請求書(起訴状)において処罰を求める犯罪事実を直接詳述する代わりに、被告人自身が提出した「自供始末書」の末尾にある「一覧表」に記載された各事実を指すものとして起訴した。弁護人は、このような記載方法では公訴事実の範囲が不明確であり、公訴棄却等の対象となるべき違法な起訴であると主張して上告した。
あてはめ
本件における公判請求書の記載は、被告人が自ら作成し提出した自供始末書末尾の一覧表に掲げられた各事実を指すものと理解できる。このように引用先が明確であり、かつその内容が特定されている場合には、客観的に公訴の範囲を画定することが可能である。したがって、被告人の防御に支障をきたすような「範囲不明確」な状態にはなく、公訴提起の手続が法律の規定に違反して無効であるとはいえない。また、実際に審判された事実が第一審判決の摘示事実の一部であっても、それは検察官が審判を求めた範囲内での判断であり、不告不理の原則にも反しない。
結論
本件公訴提起は有効であり、公訴事実の範囲が不明確であるとの主張は当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
起訴状(公判請求書)の記載における「引用による特定」の許容性を示した事例である。実務上、多数の余罪や複雑な表を伴う事件において、別紙や他書面を引用して公訴事実を特定する手法が認められる根拠として援用し得る。ただし、防御権行使に支障がない程度の明確性が厳格に求められる点には留意が必要である。
事件番号: 昭和26(れ)2106 / 裁判年月日: 昭和26年12月18日 / 結論: 棄却
被告人らの原審弁護人角田俊次郎が原審第一回公判において、A造船工業株式会社社員B及びCを証人として申請し原審においてその採否を留保していたところ、結局第二回公判において、いずれもこれを却下したことは所論のとおりである。しかし原審において弁護人が右両名の証人を申請したのは、単に犯情の点について、買主が売つて呉れといつたの…