然し原判決が認定していることは物価統制令第一三条の二(同令第三条)違反の事実であるから一定の公定価格を超過する価格で販売する目的である物品を所持していた事実を確定すれば判示事実としては十分であつて更にこれを買受けるであろうところの者の身分まで摘示しなければならないものではない(引用の大審院判例は本件の場合に適切なものではない)。又前記のように物価庁告示指定の統制額(貫当りさばとあじはいづれも一五〇円わらさは二五〇円)より一貫について三〇円位を超過して販売する目的で所持していた事実が認定されている以上当時幾らで販売する目的であつたか又その超過額が幾らになるかを具体的に判示しなかつたからといつて違法ではない。従つて論旨は理由がない。
物価統制令第一三条の二違反事実の判示方――物品の買受人が小売業者であるか否かを摘示することの要否
物価統制令3条,物価統制令13条の2,昭和23年7月22日物価庁告示514号
判旨
公訴事実に掲げられた品名が「等」と表記されている場合、その例示に含まれる同種の物品も審判対象に含まれる。また、物価統制令違反の罪においては、公定価格を超過する目的で所持した事実が確定されれば足り、買受人の身分や具体的な超過額の細部までの摘示は不要である。
問題の所在(論点)
1. 公訴事実に「等」と記載されている場合、例示されていない同種の物品(いなだ)を認定することは、審判の請求を受けない事実を認定した違法(不告不理の原則違反)となるか。2. 物価統制令違反の罪において、買受人の身分や具体的な販売価格・超過額の摘示は犯罪事実の特定として必要か。
規範
1. 公訴事実に特定の物品名が列挙され、末尾に「等」と付されている場合、その記載が他の同種の物品を排除する趣旨でない限り、当該物品も公訴事実の範囲内に含まれる。2. 物価統制令違反(超過販売目的の所持)の罪における犯罪事実の特定としては、一定の公定価格を超過する価格で販売する目的があったことを確定すれば足り、転売相手の身分や、具体的な販売予定価格・超過額の数値までを詳細に判示する必要はない。
事件番号: 昭和26(れ)1766 / 裁判年月日: 昭和26年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】価格等の統制額を超えて契約した等の場合に成立する価格違反の罪において、販売価格が具体的に表示され、その価格が告示の統制額を超えていることが明らかであれば、犯罪事実の説明として十分である。また、告示の規格に該当しない物品であっても「その他の」という包括的区分に該当し得る。 第1 事案の概要:被告人は…
重要事実
被告人は、公定価格を超過して販売する目的で、鮮魚である「さば」「あじ」「いなだ」を所持していたとして起訴された。公判請求書の公訴事実には「さば大四三六貫あじ八貫等」と記載されていたが、原判決はこれに加えて「いなだ二貫二五〇匁」の所持事実も認定した。また、原判決は卸売業者の統制額より「一貫について三〇円位」を超過して販売する目的であった旨を認定したが、具体的な買受人が誰であるかや、正確な超過額については詳細に特定していなかったため、被告人が審判対象の逸脱および事実不適法を理由に上告した。
あてはめ
1. 公訴事実に「さば」「あじ」に続けて「等」との記載がある場合、これは例示された二種に限定する趣旨ではなく、当時被告人が同様の目的で所持していた「いなだ」も含む趣旨と解される。したがって、これらを一括して認定しても審判範囲の逸脱には当たらない。2. 物価統制令13条の2(3条)違反の成否は、公定価格を超過する価格で販売する目的の有無にかかっており、特定の買受人の身分(卸売か小売か等)までを確定することは構成要件上必須ではない。また、告示の統制額を基準に「三〇円位」超過との認定があれば、具体的金額が精緻でなくとも、公定価格違反の事実は十分に特定されているといえる。
結論
原判決に違法はなく、上告を棄却する。公訴事実の「等」に含まれる事実の認定は許容され、かつ物価統制令違反の罪における販売目的等の認定は、公定価格を超過する概括的な事実の摘示で足りる。
実務上の射程
訴因の特定および審判対象の範囲に関する判例である。「等」という記載による包括的表示が許容される範囲や、経済統制法規における構成要件的充足に資する事実摘示の程度(細部の具体的数値の要否)を検討する際の指標となる。特に、複数の物件を扱う事案での訴因の弾力的な解釈を肯定する文脈で参照し得る。
事件番号: 昭和26(れ)1638 / 裁判年月日: 昭和26年11月1日 / 結論: 棄却
本件公判請求書記載の事実は被告人提出の自供始末書末尾一覧表記載の各事実を指すものと理解すべきであるから、本件公訴は所論のようにその範囲不明確ということはできない。
事件番号: 昭和26(れ)1717 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の判示販売行為が法令違反の事実に該当する場合、弁護人が主張する諸般の事情があったとしても、直ちに行為の違法性が阻却されるものではない。 第1 事案の概要:被告人は、法令により制限されている販売行為を行った。弁護人は、当該販売行為に至った経緯や背景にある特定の事情を根拠として、憲法違反や事実誤…