第一審及び原審が被告人に適用した所論物價統制令第一三條の二の違反の罪は、その成立に、物價廳告示の價格を超過した價格で物品を取引することを必要とするものではなく、統制價格を超過した價格等で取引する目的で物品を所持することだけで成立するものである。從つて、所論物價廳告示の價格を超過した價格であることは單に本件犯罪の動機目的たるに過ぎないもので、犯罪の構成事實ではないといわなければならぬ。されば第一審判決の判示事實に對する法律の適用においては同令第一三條ノ二同令第三五條を舉示すれば足り所論告示を舉示すべき筋合ではないから、第一審判決及び原判決はいづれも所論のような判例に違反するものではなく又所論憲法に違背するものでもない。
物價統制令第一三條の二違反罪の擬律と物價廳告示舉示の要否
物價統制令13條の2,刑訴法335條1項
判旨
物価統制令13条の2所定の罪は、統制価格を超過した価格で取引する目的で物品を所持することによって成立し、告示の価格を超過している事実は犯罪の構成事実ではなく動機・目的にすぎない。したがって、判決の法令適用において具体的な物価庁告示を挙示する必要はない。
問題の所在(論点)
物価統制令13条の2違反の罪(統制額超過取引目的の物品所持罪)において、目的の対象となる価格を定めた「物価庁告示」は犯罪の構成事実にあたるか。また、判決の法令適用において当該告示を明示する必要があるか。
規範
特定の目的をもって行われる予備的行為を処罰する罪において、その目的の内容を基礎付ける行政上の基準(告示等)は、犯罪の構成事実そのものではなく、行為の動機または目的を画定する要素にすぎない。したがって、判決の法令適用においては、処罰の根拠となる直接の罰則規定を挙示すれば足り、目的の内容を具体化する告示等の挙示までを要するものではない。
重要事実
被告人は、物価庁告示による公定価格を超過した価格で物品を売却する目的をもって、判示の日時場所において当該物品を所持していた。第一審判決は、この事実を認定しながら、法令の適用において物価統制令13条の2および35条を挙示するにとどまり、具体的な公定価格を定めた物価庁の告示を挙示しなかった。被告人側は、告示の挙示を欠く判決には重大な瑕疵があり、判例違反および憲法31条違反にあたると主張して上告した。
あてはめ
物価統制令13条の2の罪は、現実に統制価格を超過した価格で取引を行うことを要件とせず、そのような目的で所持すること自体を処罰するものである。この場合、告示価格を超過しているという事実は、所持行為の背後にある「動機・目的」を構成する事情にすぎず、刑罰法令の構成事実そのものとは解されない。したがって、第一審および原審が、罰則の根拠条文である同令13条の2および35条を挙示し、具体的告示を省略したことに法令適用の誤り(擬律の錯誤)や憲法違反は認められない。
結論
物価庁告示の価格超過は犯罪の構成事実ではなく動機・目的にすぎないため、法令適用において告示を挙示しなくても違法ではない。上告棄却。
実務上の射程
行政刑法において、構成要件の認定に際し行政処分や告示の内容がどの程度判決書に記載されるべきかの基準を示す。目的犯における「目的」の内容をなす事実が構成事実そのものではないとされる場合、その詳細な法的根拠(告示等)の欠如が直ちに判決の違法を導くものではないことを明確にしている。
事件番号: 昭和23(れ)622 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令13条の2違反の罪を判示する際、判決文に法定の統制額を表示することや、当該額を指定した告示の適用を示すことは必要ではない。 第1 事案の概要:被告人が物価統制令13条の2に違反する行為を行ったとして起訴された事案において、原審は被告人の有罪を認めた。これに対し弁護人は、判決において法定の…