昭和二〇年勅令第五四二号及びこれに基いて発せられた外国人登録令が日本憲法にかかわりなく同憲法施行後も同憲法外において法的効力を有し、しかも右勅令第五四二号が日本国との平和条約発効の日から廃止されたけれども、そのために同勅令が遡つて無効となるものでもなく、また同勅令に基いて発せられた命令が日本国との平和条約が発効したというだけで直ちに無効となるものでないこと、従つて前記平和条約が発効したとの一事を以つて右発効の日から施行された外国人登録法がその附則二項及び三項において外国人登録令を廃止すると共に廃止前にした行為の罰則の適用について、なお、従前の例によるものとしたことを違憲であるということができないことは既に当裁判所の判例とするところである(昭和二七年(あ)第四〇一七号同二九年二月二六日第二小法廷判決「集八巻二号一九五頁」昭和二四年(れ)第六八五号同二八年四月八日大法廷判決「集七巻四号七七五頁」昭和二七年(あ)第二八六八号同二八年七月二二日大法廷判決「集七巻七号一五六二頁」各参照)。
外国人登録令および外国人登録法附則第二項第三項の合憲性
外国人登録令,外国人登録法附則1項,外国人登録法附則2項,外国人登録法附則3項
判旨
ポツダム宣言の受諾に伴うポツダム勅令及びそれに基づく命令は、日本国憲法施行後も憲法外の法的効力を有し、平和条約発効による失効後も、失効前の行為に対し罰則の経過規定を適用することは合憲である。
問題の所在(論点)
ポツダム勅令に基づき発せられた命令が、日本国憲法施行後も有効性を維持するか。また、平和条約発効による当該命令の廃止後、失効前の行為について経過規定に基づき処罰することが憲法に違反しないか。
規範
昭和20年勅令第542号(ポツダム勅令)及びこれに基づく命令は、日本国憲法の施行にかかわらず、憲法外において法的効力を有する。また、平和条約の発効により当該勅令が廃止されたとしても、当然に遡及して無効となるものではなく、失効前の行為に対して罰則を適用する経過規定を設けることは憲法に違反しない。
事件番号: 昭和27(あ)4017 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
一 昭和二〇年勅令第五四二号に基いて発せられた外国人登録令は、平和条約が発効したというだけで、直ちに無効となるものではない。 二 平和条約発効の日から施行された外国人登録法が、その附則第二項及び第三項において、いわゆるポツダム勅令たる外国人登録令を廃止すると共に、廃止前にした行為の罰則の適用については、なお従前の例によ…
重要事実
被告人は、外国人登録法が施行される前の旧外国人登録令(ポツダム勅令に基づき発せられたもの)に違反する行為を行った。その後、平和条約の発効に伴い、外国人登録法が制定され、その附則において旧令を廃止しつつ、廃止前の行為に対する罰則の適用については「なお従前の例による」との経過規定が置かれた。弁護人は、平和条約の発効により旧令が失効した以上、過去の行為を処罰することは違憲であると主張して上告した。
あてはめ
まず、ポツダム勅令及び外国人登録令は、ポツダム宣言の受諾に伴う連合国最高司令官の要求を具体化する特段の性質を有するため、日本国憲法の枠外で法的効力を維持すると解される。次に、平和条約の発効という一事をもって、旧令に基づく過去の行為に対する罰則が当然に無効となるものではない。外国人登録法附則が、旧令廃止後も失効前の違反行為について罰則を適用すると規定することは、法の連続性と秩序維持の観点から合理性を有し、違憲とはいえない。
結論
外国人登録法附則による旧令違反行為への罰則適用は合憲であり、被告人を処罰することは適法である。
実務上の射程
憲法制定過程や占領下の特権的法令に関する「憲法外の効力」を認めた特殊な判例である。現代の司法試験においては、法令の改廃に伴う罰則の経過規定(刑法6条、刑訴法411条等)の合憲性を検討する際の歴史的・基礎的判例として位置づけられる。
事件番号: 昭和28(あ)948 / 裁判年月日: 昭和31年5月4日 / 結論: 破棄自判
昭和二二年勅令第二〇七号外国人登録令施行当時、同令第四条第一項附則第二項に違反し同令第一二条第二号の罪を犯した者が、昭和二四年政令第三八一号改正令施行後まで所定の登録申請をしなかつた場合には、新法である右改正令第一三条第一号を適用し処断すべきである。 (裁判官池田克の補足意見) 右改正令の施行に当つての経過法を定めた附…