一 昭和二〇年勅令第五四二号に基いて発せられた外国人登録令は、平和条約が発効したというだけで、直ちに無効となるものではない。 二 平和条約発効の日から施行された外国人登録法が、その附則第二項及び第三項において、いわゆるポツダム勅令たる外国人登録令を廃止すると共に、廃止前にした行為の罰則の適用については、なお従前の例によるものとしたことは違憲でない。
一 外国人登録令の平和条約発効後における効力 二 外国人登録法附則第二項および第三項の合憲性
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年法律第81号)1項,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年法律第81号)2項,外国人登録法附則1項,外国人登録法附則2項,外国人登録法附則3項
判旨
ポツダム宣言の受諾に伴う連合国最高司令官の要求に係る命令(いわゆるポツダム勅令・命令)は、日本国憲法施行後も憲法外の効力を有しており、平和条約の発効によって当然に無効となるものではない。
問題の所在(論点)
平和条約の発効によりポツダム命令(外国人登録令)が失効するか。また、失効後の罰則の適用を定めた外国人登録法附則の経過措置は、憲法に違反しないか。
規範
昭和20年勅令第542号(ポツダム勅令)およびこれに基づく命令は、日本国憲法の施行にかかわらず、同憲法外において法的効力を有する。また、平和条約の発効により同勅令が廃止されたとしても、遡及的に無効となるものではなく、同勅令に基づく各命令も条約発効の一事をもって直ちに効力を失うものではない。
重要事実
被告人は、外国人登録法が施行される前に、同法の前身である外国人登録令(ポツダム命令)に違反する行為を行った。その後、平和条約の発効に伴い外国人登録法が制定され、外国人登録令は廃止されたが、同法附則において廃止前の行為に対する罰則の適用については「従前の例による」との経過措置が設けられた。被告人は、平和条約の発効により前提となる命令が失効した以上、処罰は違憲であるとして争った。
あてはめ
判例の趣旨に照らせば、ポツダム勅令および命令は日本国憲法の体系外で有効に存在していた。平和条約の発効によりポツダム勅令自体は廃止されたが、それによって過去の効力が否定されるものではない。したがって、新法である外国人登録法が、旧令(外国人登録令)下の違反行為について罰則の適用を継続させる経過規定を置くことは、法秩序の連続性を維持する合理的な措置であり、違憲とはいえない。
結論
外国人登録令違反の行為に対し、新法施行後も従前の例により罰則を適用する外国人登録法附則の規定は合憲である。上告棄却。
実務上の射程
占領下の超憲法的法秩序(ポツダム法体)の効力に関する基本判例である。現代の司法試験では直接的な論点となることは稀だが、法の不遡及や経過措置の合理性を検討する際の前提知識として、また日本国憲法の成立過程と効力範囲に関する理解を問う場面で重要となる。
事件番号: 昭和28(あ)948 / 裁判年月日: 昭和31年5月4日 / 結論: 破棄自判
昭和二二年勅令第二〇七号外国人登録令施行当時、同令第四条第一項附則第二項に違反し同令第一二条第二号の罪を犯した者が、昭和二四年政令第三八一号改正令施行後まで所定の登録申請をしなかつた場合には、新法である右改正令第一三条第一号を適用し処断すべきである。 (裁判官池田克の補足意見) 右改正令の施行に当つての経過法を定めた附…