判旨
占領目的阻害行為処罰令は、平和条約の発効により当然に失効し、同令違反の罪を処罰することは憲法上許されなくなるため、刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し免訴されるべきである。
問題の所在(論点)
平和条約の発効により占領軍の指令に基づく政令(昭和25年政令325号)が失効した場合、同条約発効前の違反行為について、刑訴法337条2号(犯罪後の法令による刑の廃止)を適用して免訴とすべきか。
規範
ポツダム宣言の受諾に伴い発せられた占領軍の指令に基づく政令(ポツダム政令)は、平和条約の発効によって占領が終了した後は、特段の経過規定がない限り、その存立の基礎を失って当然に失効する。このように、特定の事情の下で暫定的に制定された法令がその前提条件の消滅により効力を失うことは、刑訴法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当または準ずるものと解するのが相当である。
重要事実
被告人は、昭和25年政令325号(占領目的阻害行為処罰令)に違反する行為および銃砲刀剣類等所持取締令に違反する行為(日本刀一振の所持)を行ったとして起訴された。第一審および第二審において有罪判決を受けたが、上告審の審理中に平和条約が発効(1952年)し、占領状態が解除されるに至った。これにより、占領目的の達成を前提としていた同政令の効力が争点となった。
あてはめ
本件における昭和25年政令325号は、占領目的を阻害する行為を処罰するために制定されたものであるが、平和条約の発効により日本が独立を回復し占領が終了した以上、同政令はその存立根拠を失い当然に失効したものと認められる。この失効は、単なる事実上の変更ではなく、憲法秩序の回復に伴う法的な処罰根拠の消滅を意味する。したがって、本件被告人の行為のうち同政令違反の点については、犯罪後に刑が廃止された場合に当たるというべきであり、実体判決を下すことはできない。
結論
本件公訴事実のうち政令325号違反の点については、刑訴法337条2号により免訴とする。一方で、銃砲刀剣類等所持取締令違反については、同令の効力に影響はないため、懲役四月に処し、当該日本刀を没収する。
事件番号: 昭和27(あ)77 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、これに違反した行為を処罰することは憲法上許されない。したがって、同政令違反の罪は犯罪後の法令により刑が廃止された場合に該当し、免訴の対象となる。 第1 事案の概要:被告人等は、昭和25年6月26日及び同年7…
実務上の射程
法令の改廃が事実上の事情変更にすぎない場合は刑の廃止に当たらない(限時法理論)とするのが通説的見解であるが、本判決は占領から独立への転換という憲法学的・歴史的変革に伴う失効については免訴(刑の廃止)を認めた。司法試験においては、法令の失効が「事実上の変更」か「法的な評価の変更」かを区別する際のメルクマールとして、本判決の論理を引用することができる。
事件番号: 昭和27(あ)6091 / 裁判年月日: 昭和30年11月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令は、平和条約の発効と同時にその効力を失うため、発効前の違反行為を処罰することは刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、連合国最高司令官による「言論及び新聞の自由」と題する覚書に基づき、「公式に発表せられざる…
事件番号: 昭和28(あ)1768 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、同条約発効後の時点においては刑法上の「犯罪後の法令により刑が廃止された」場合に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、ポツダム宣言の受諾に伴い発せられる命令に関する件に基づく「占領目的阻害行為処罰令」(昭和…
事件番号: 昭和28(あ)2092 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効とともに失効した。これにより、同令違反の行為は、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴の対象となる。 第1 事案の概要:被告人は、占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)に基づき、…
事件番号: 昭和26(あ)3811 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効により当然に失効し、又は憲法21条に違反する連合国最高司令官の指令を適用する限りにおいて失効したと解されるため、同条約発効後の処罰は刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は…