判旨
占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)の根拠となる連合国最高司令官の覚書のうち、表現の自由を不当に制限する部分は日本国憲法施行後において無効であり、平和条約発効に伴い当該罰則は廃止されたものとみなされる。
問題の所在(論点)
連合国最高司令官の覚書に基づき占領目的阻害行為を処罰する政令が、平和条約発効後も存続するか。また、軍の動静に関する論議を一律に禁止する規定が、憲法21条1項の保障する表現の自由との関係で、「犯罪後の法令による刑の廃止(刑訴法337条2号)」を導くか。
規範
ポツダム宣言の受諾に伴い発せられた命令(ポツダム命令)は、平和条約の発効とともに原則として失効する。また、命令の内容が日本国憲法の保障する基本的人権を不当に侵害する場合、その指令を適用して処罰を継続することは憲法上許されず、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。
重要事実
被告人は、占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)に違反したとして起訴された。適用されたのは、1945年9月10日付連合国最高司令官覚書「言論及び新聞の自由」3項であり、そこでは「公式に発表せられざる連合国軍隊の動静」を「論議すること」が禁止されていた。第一審および控訴審は有罪としたが、平和条約の発効を経て、当該政令の効力および憲法適合性が争点となった。
あてはめ
本件覚書3項が「公式に発表されていない連合国軍の動静」について「論議」すること自体を包括的に禁止している点は、正当な表現活動までも過度に制限するものであり、憲法21条の趣旨に照らして許容されない。占領下では特例的に有効であったとしても、主権回復後の日本法においては、かかる憲法違反の内容を含む指令を処罰根拠とすることはできない。したがって、平和条約の発効と同時に当該処罰の根拠は失われ、実質的に罰則が廃止されたのと同等の状態に至ったと評価できる。
結論
被告人を免訴する。本件覚書の禁止部分は憲法に違反し、平和条約発効とともに失効したため、刑訴法337条2号の「刑の廃止」があった場合に該当する。
事件番号: 昭和27(あ)6091 / 裁判年月日: 昭和30年11月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令は、平和条約の発効と同時にその効力を失うため、発効前の違反行為を処罰することは刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、連合国最高司令官による「言論及び新聞の自由」と題する覚書に基づき、「公式に発表せられざる…
実務上の射程
占領法規の失効と憲法適合性の判断が交錯する事案における、刑訴法337条2号(免訴)の適用場面を示す。特に、憲法に抵触する内容を持つ旧法令が平和条約発効によって効力を失った場合、単なる「失効」ではなく「刑の廃止」として扱うべきとした点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和27(あ)1708 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)に基づく表現規制は、平和条約の発効により失効し、憲法21条に違反する状態となったため、刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人らは、連合国最高司令官の指令に基づき「アカハタ」及びその類縁紙の発…
事件番号: 昭和28(あ)2092 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効とともに失効した。これにより、同令違反の行為は、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴の対象となる。 第1 事案の概要:被告人は、占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)に基づき、…
事件番号: 昭和27(あ)77 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、これに違反した行為を処罰することは憲法上許されない。したがって、同政令違反の罪は犯罪後の法令により刑が廃止された場合に該当し、免訴の対象となる。 第1 事案の概要:被告人等は、昭和25年6月26日及び同年7…
事件番号: 昭和26(あ)3811 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効により当然に失効し、又は憲法21条に違反する連合国最高司令官の指令を適用する限りにおいて失効したと解されるため、同条約発効後の処罰は刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は…