判旨
占領軍の占領目的に有害な行為を処罰するポツダム勅令(昭和21年勅令311号)は、平和条約の発効により当然に失効し、又は憲法21条に反することとなるため、「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。
問題の所在(論点)
平和条約の発効により、占領軍の目的に有害な行為を処罰するポツダム勅令の効力が失われた場合、刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきか。
規範
ポツダム宣言の受諾に伴い発せられた占領軍指令に基づく処罰規定は、平和条約の発効によって占領が終了した後は、当然にその効力を維持することができず失効する。また、占領目的のために言論の自由等を制限する規定は、平和条約発効後の日本憲法下においては、憲法21条が保障する精神的自由を不当に侵害するものとして許容されない。これらの事由により処罰根拠が消滅した場合は、刑罰法令の改廃と同視でき、刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。
重要事実
被告人等は、昭和21年勅令311号「連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令」に違反する行為(連合国に対する虚偽又は破壊的批評及び風説を論議する行為等)を行ったとして起訴された。しかし、その裁判手続中にサンフランシスコ平和条約が発効し、日本が主権を回復したことで、同勅令及びその根拠となった連合国最高司令官覚書(プレスコード等)の効力が問題となった。
あてはめ
昭和21年勅令311号は、連合国占領軍による占領目的達成のために特別に制定された軍事的な要請に基づく規定である。平和条約の発効は、日本から占領軍の法的支配が脱することを意味し、これに伴い当該勅令はその存立基盤を失い当然に失効したものといえる。また、同勅令が制限する「連合国に対する批評」の禁止等は、憲法21条の表現の自由と真っ向から衝突する。したがって、主権回復後の日本において同勅令を維持することは憲法上許されず、実質的に刑の廃止があったものと解される。
結論
本件は刑事訴訟法337条2号に定める「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」にあたるため、原判決及び第一審判決を破棄し、被告人等を免訴とする。
事件番号: 昭和27(あ)2 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領軍の目的に有害な行為を処罰する勅令は、平和条約発効により、憲法上の保障(表現の自由等)との抵触や占領目的の消滅に伴い失効したと解される。これにより、当該勅令違反の事案は、刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきである。 第1 事案の概要:被告人等は、…
実務上の射程
法令が憲法違反や国際条約の変化により事後的に失効・廃止された場合の処理を示す。特に「刑の廃止」の意義を、単なる立法府による廃止だけでなく、実質的な効力喪失(違憲無効化を含む)まで含めて解釈する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)4497 / 裁判年月日: 昭和30年6月1日 / 結論: その他
昭和二〇年九月一〇日付連合庫最高司令官の「言論及び新聞の自由」と題する覚書第三項の「連合国に対する虚偽又は破壊批評及び風説」を「論議すること」を禁止し処罰する部分についての昭和二一年勅令第三一一号「連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令」違反の罪は講和条約発効後においては、刑の廃止があつたものとし…
事件番号: 昭和26(あ)880 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】連合国占領軍の占領目的に有害な行為を処罰する勅令は、平和条約の発効により当然に失効し、憲法違反等の理由から効力を維持できない。そのため、本件は刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、連合国占領軍の占領目的に有害な行為を処…
事件番号: 昭和25(あ)1848 / 裁判年月日: 昭和31年1月25日 / 結論: その他
一 第一審判決は、被告人らが共謀のうえ「いま福井県敦賀市では占領軍兵員により婦女子に対するにくむべき強姦がいたるところでおこなわれていて、恐怖におそわれた敦賀市民は娘をどしどし疏開させている。うんぬん」という意味の真実に符合せずかつ公安を害するおそれある事項を掲載した新聞を印刷したとの事実を認定して、昭和二一年勅令第三…
事件番号: 昭和26(あ)1601 / 裁判年月日: 昭和30年2月23日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領下における連合国最高司令官の許可なき出国行為は、その後の法令改正により許可が不要となった場合、刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」があったものと解される。 第1 事案の概要:被告人は昭和24年12月、連合国最高司令官の許可を受けずに大阪府から沖縄へ不法に出国した。当時の法令(昭和21年勅令31…