昭和二〇年九月一〇日付連合庫最高司令官の「言論及び新聞の自由」と題する覚書第三項の「連合国に対する虚偽又は破壊批評及び風説」を「論議すること」を禁止し処罰する部分についての昭和二一年勅令第三一一号「連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令」違反の罪は講和条約発効後においては、刑の廃止があつたものとして免訴すべきである。
昭和二〇年九月一〇日付連合国最高司令官覚書「言論及び新聞の自由」第三項についての昭和二一年勅令第三一一号違反の罪と講和条約の発効
「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件(昭和20年勅令542号),昭和20年9月10日付連合国最高司令官覚書「言論及ビ新聞ノ自由ニ関スル件」3項,聯号国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令(昭和21年勅令311号)2条,聯号国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令(昭和21年勅令311号)4条,刑訴法337条2号,刑訴法411条5号,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年法律81号),ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律1137号)2条6号,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律1137号)3条,憲法21条
判旨
占領目的阻害行為処罰勅令(ポツダム勅令)は、平和条約の発効とともに当然に失効し、または憲法21条に違反する限度で失効するため、同勅令違反の罪は刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。
問題の所在(論点)
平和条約の発効によってポツダム勅令が失効した場合、当該勅令違反の罪で起訴されている被告人に対し、刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」を適用して免訴とすべきか。
規範
ポツダム宣言の受諾に伴い発せられた占領目的阻害行為処罰勅令(昭和21年勅令311号)は、平和条約の発効による占領状態の終結とともにその根拠を失い、当然に失効する。また、同勅令に基づく指令のうち「連合国に対する虚偽又は破壊的批評」の禁止等の部分は、表現の自由を保障する憲法21条に抵触する。したがって、これらの法令の失効は、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴の対象となる。
事件番号: 昭和27(あ)2661 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領軍の占領目的に有害な行為を処罰するポツダム勅令(昭和21年勅令311号)は、平和条約の発効により当然に失効し、又は憲法21条に反することとなるため、「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人等は、昭和21年勅令311号「連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対…
重要事実
被告人は、占領下において、連合国軍の占領目的に有害な行為を禁止する「占領目的阻害行為処罰勅令」に違反する行為(連合国に対する批評等)を行ったとして起訴された。しかし、第一審および控訴審の判決後に、日本国との平和条約(サンフランシスコ平和条約)が発効し、日本は主権を回復した。これにより、占領軍の権限に基づくポツダム勅令の効力が争点となった。
あてはめ
本件ポツダム勅令は、連合国最高司令官の要請に基づき占領目的を達成するために制定された特殊な法令である。平和条約の発効により占領状態が終了した以上、その目的に奉仕する同勅令は当然に失効したものと解される。また、本件で適用されている指令の内容(連合国に対する批評の禁止)は、主権回復後の日本においては憲法21条(表現の自由)が保障する基本的人権を不当に制限するものである。以上より、本件は実体的な処罰根拠が消滅しており、刑事訴訟法337条2号の事由を充足するといえる。
結論
原判決及び第一審判決を破棄し、被告人を免訴する。
実務上の射程
ポツダム勅令という特殊な法令に関する判断であるが、法令の改廃が「反省的考慮」に基づくものか、単なる「事実の変化」に基づくものかという刑法6条・刑訴法337条2号の解釈において、憲法適合性や条約発効による法秩序の変化を重視した事例として参照される。
事件番号: 昭和27(あ)2 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領軍の目的に有害な行為を処罰する勅令は、平和条約発効により、憲法上の保障(表現の自由等)との抵触や占領目的の消滅に伴い失効したと解される。これにより、当該勅令違反の事案は、刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきである。 第1 事案の概要:被告人等は、…
事件番号: 昭和26(あ)880 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】連合国占領軍の占領目的に有害な行為を処罰する勅令は、平和条約の発効により当然に失効し、憲法違反等の理由から効力を維持できない。そのため、本件は刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、連合国占領軍の占領目的に有害な行為を処…
事件番号: 昭和25(あ)1848 / 裁判年月日: 昭和31年1月25日 / 結論: その他
一 第一審判決は、被告人らが共謀のうえ「いま福井県敦賀市では占領軍兵員により婦女子に対するにくむべき強姦がいたるところでおこなわれていて、恐怖におそわれた敦賀市民は娘をどしどし疏開させている。うんぬん」という意味の真実に符合せずかつ公安を害するおそれある事項を掲載した新聞を印刷したとの事実を認定して、昭和二一年勅令第三…
事件番号: 昭和26(あ)1601 / 裁判年月日: 昭和30年2月23日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領下における連合国最高司令官の許可なき出国行為は、その後の法令改正により許可が不要となった場合、刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」があったものと解される。 第1 事案の概要:被告人は昭和24年12月、連合国最高司令官の許可を受けずに大阪府から沖縄へ不法に出国した。当時の法令(昭和21年勅令31…