判旨
占領下における連合国最高司令官の許可なき出国行為は、その後の法令改正により許可が不要となった場合、刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」があったものと解される。
問題の所在(論点)
法令の改正により、従来処罰対象であった行為が処罰されないこととなった場合、刑訴法337条2号の「刑の廃止」に該当し、免訴判決をすべきか。
規範
行為時に罰すべきものとされていた行為であっても、その後の法令の改廃により、当該行為を処罰しないこととされた場合には、刑の廃止があったものと解すべきである。これは、特定の行為を犯罪として処罰する必要がなくなったという政策的判断に基づく変更が含まれる。
重要事実
被告人は昭和24年12月、連合国最高司令官の許可を受けずに大阪府から沖縄へ不法に出国した。当時の法令(昭和21年勅令311号等)によれば、この行為は占領目的に有害な行為として処罰の対象であった。しかし、原判決後の昭和26年12月1日以降、日本人の海外渡航に連合国最高司令官の許可を要しないこととなり、当該行為を処罰する根拠が失われた。
あてはめ
被告人の不法出国行為は、行為当時には連合国最高司令官の覚書および関連政令により禁止・処罰の対象であった。しかし、昭和26年12月1日以降、日本人の海外渡航に許可を要しない運用へと変更され、処罰規定の適用がなくなった。このような実質的な処罰規定の消滅は、法の変更により当該行為を犯罪として取り扱わないこととしたものといえる。したがって、被告人の行為に対しては、原判決後に「刑の廃止」があったと認められる。
結論
被告人の行為に対しては、原判決後に刑の廃止があったため、刑訴法411条5号、337条2号に基づき、原判決を破棄した上で被告人を免訴とする。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(あ)434 / 裁判年月日: 昭和30年2月23日 / 結論: その他
一 日本人が、昭和二二年四月一四日附連合国最高司令官の「日本人の海外旅行者に対する旅行証明書に対する覚書」に違反して、同司令官の承認を受けないで不法に本邦から出国したとの、昭和二五年政令第三二五号違反の罪については、昭和二六年一二月一日以降の廃止があつたものである。 二 南西諸島大島郡が外国とみなされていた当時、免許を…
限時法の失効や、法改正による犯罪非該当化が「刑の廃止」に当たるかという論点において、判例が「事実上の変遷」ではなく「法の変更」を重視していることを示す事案として位置付けられる。答案上は、刑法6条(刑の軽重)との関係や、刑訴法上の免訴事由の有無を検討する際に応用される。
事件番号: 昭和27(あ)2 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領軍の目的に有害な行為を処罰する勅令は、平和条約発効により、憲法上の保障(表現の自由等)との抵触や占領目的の消滅に伴い失効したと解される。これにより、当該勅令違反の事案は、刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきである。 第1 事案の概要:被告人等は、…
事件番号: 昭和26(あ)880 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】連合国占領軍の占領目的に有害な行為を処罰する勅令は、平和条約の発効により当然に失効し、憲法違反等の理由から効力を維持できない。そのため、本件は刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、連合国占領軍の占領目的に有害な行為を処…
事件番号: 昭和27(あ)2661 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領軍の占領目的に有害な行為を処罰するポツダム勅令(昭和21年勅令311号)は、平和条約の発効により当然に失効し、又は憲法21条に反することとなるため、「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人等は、昭和21年勅令311号「連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対…
事件番号: 昭和25(あ)1848 / 裁判年月日: 昭和31年1月25日 / 結論: その他
一 第一審判決は、被告人らが共謀のうえ「いま福井県敦賀市では占領軍兵員により婦女子に対するにくむべき強姦がいたるところでおこなわれていて、恐怖におそわれた敦賀市民は娘をどしどし疏開させている。うんぬん」という意味の真実に符合せずかつ公安を害するおそれある事項を掲載した新聞を印刷したとの事実を認定して、昭和二一年勅令第三…