一 日本人が、昭和二二年四月一四日附連合国最高司令官の「日本人の海外旅行者に対する旅行証明書に対する覚書」に違反して、同司令官の承認を受けないで不法に本邦から出国したとの、昭和二五年政令第三二五号違反の罪については、昭和二六年一二月一日以降の廃止があつたものである。 二 南西諸島大島郡が外国とみなされていた当時、免許を受けないで日本内地から同地域へ、若しくは同地域から日本内地へ貨物を密輸出し、若しくは密輸入した罪については、その後右地域がわが国に復帰し外国とみなされなくなつても、刑の廃止があつたものとはいえない。
一 昭和二二年四月一四日附連合国最高司令官の「日本人の海外旅行者に対する旅行証明書に関する覚書」に違反した不法出国の罪と刑の廃止 二 外国とみなされていた地域に対する貨物無免許輸出入の罪と右地域のわが国えの復帰による刑の廃止の有無
刑法6条,刑訴法337条2号,昭和25年政令325号占領目的阻害行為処罰令,昭和22年4月14日附連合国最高司令官の「日本人の海外旅行者に対する旅行証明書に関する覚書」,昭和26年6月2日附連合国最高司令官の「旅券発行の権限に関する覚書」,昭和26年11月26日附連合国最高司令官の「日本人の海外旅行」に関する覚書(SCAPIN2185号),旅券法附則2項,旅券法附則3項,出入国管理令(昭和26年10月4日政令319号)60条,出入国管理令(昭和26年10月4日政令319号)71条,昭和32年法律61号関税法(昭和25年9月30日政令295号による改正前のもの)76条,昭和32年法律61号関税法(昭和25年9月30日政令295号による改正前のもの)104条,昭和24年5月26日大蔵省令36号,昭和28年12月14日政令407号「奄美諸島の復帰に伴う国税関係法令の適用の暫廷措置に関する件」附則8項
判旨
占領下の連合国軍の指令等に基づく刑罰法規が、事後の占領状態の解除や法令改正により廃止された場合、刑事訴訟法411条5号および337条2号にいう「刑の廃止」があったものとして免訴すべきである。
問題の所在(論点)
占領目的達成のために制定された禁止規定や、特定の地域を便宜的に「外国」とみなして関税法を適用していた法令が、占領状態の解消や地域復帰に伴う法令改正により失効・変更された場合、刑事訴訟法337条2号の「刑の廃止」にあたるか。
規範
特定の行為を処罰する根拠となった法令が、単に事実上の変遷により効力を失ったにとどまらず、法令の改廃によってその行為に対する国家的・社会的評価が変更され、可罰性が消滅したと認められる場合には、刑事訴訟法337条2号の「刑の廃止」に該当する。
事件番号: 昭和26(あ)1601 / 裁判年月日: 昭和30年2月23日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領下における連合国最高司令官の許可なき出国行為は、その後の法令改正により許可が不要となった場合、刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」があったものと解される。 第1 事案の概要:被告人は昭和24年12月、連合国最高司令官の許可を受けずに大阪府から沖縄へ不法に出国した。当時の法令(昭和21年勅令31…
重要事実
被告人等は昭和25年、当時の占領下において連合国最高司令官の許可を得ずに南西諸島へ密出国し、また同地域を関税法上の「外国」とみなす省令に基づき貨物を密輸出入した。しかし、判決後の昭和26年には海外渡航の許可制が廃止され、さらに昭和28年には奄美群島の復帰に伴い、当該地域を「外国」とみなす政令上の規定が改正され、同地域との間の物資交流に免許を要しないこととなった。
あてはめ
密出国の罪については、昭和26年以降、日本人の海外渡航に連合国最高司令官の許可を要しないこととなり、占領目的による処罰の根拠が失われた。これは事実上の変更にとどまらず、法的な評価の変更を伴う「刑の廃止」にあたる。また、関税法違反についても、本来はわが国領土である地域を「外国とみなす」とした特例措置が、地域復帰に伴う政令改正(昭和28年)により廃止されたことで、当該行為は犯罪を構成しない状態に戻ったといえる(少数意見の論理を多数意見が一部採用した形)。
結論
被告人等の密出国および一部不法入国の事実は、判決後の法令により「刑の廃止」があったものとして免訴とされる。その他の関税法違反の点については、有罪とした原判決を維持しつつ、刑を言い渡した。
実務上の射程
限時法の失効と「刑の廃止」の区別に関する重要判例である。単なる事実の変化(需要供給のバランス変化による経済統制解除等)ではなく、法令の背後にある国家的評価の変更があった場合に免訴を認める実務上の指針となる。
事件番号: 昭和26(あ)3540 / 裁判年月日: 昭和30年9月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】刑法6条及び刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」とは、単なる事実関係の変更ではなく、反省的見地に基づく法的評価の変更を指す。関税法上の「外国」に該当しなくなった事実は単なる事実の変更であり、密出国の許可制廃止は法的評価の変更に当たる。 第1 事案の概要:被告人等は、当時関税法上「外国」とみなされて…
事件番号: 昭和27(あ)2 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領軍の目的に有害な行為を処罰する勅令は、平和条約発効により、憲法上の保障(表現の自由等)との抵触や占領目的の消滅に伴い失効したと解される。これにより、当該勅令違反の事案は、刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきである。 第1 事案の概要:被告人等は、…
事件番号: 昭和26(あ)880 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】連合国占領軍の占領目的に有害な行為を処罰する勅令は、平和条約の発効により当然に失効し、憲法違反等の理由から効力を維持できない。そのため、本件は刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、連合国占領軍の占領目的に有害な行為を処…
事件番号: 昭和27(あ)2661 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領軍の占領目的に有害な行為を処罰するポツダム勅令(昭和21年勅令311号)は、平和条約の発効により当然に失効し、又は憲法21条に反することとなるため、「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人等は、昭和21年勅令311号「連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対…