判旨
判決宣告期日が指定の日に開かれず変更手続に不備があっても、改めて告知された期日に被告人らが出頭して宣告を受けたならば、判決自体を違法とすることはできない。また、裁判長でない裁判官が署名欄に「裁判長」と誤記したとしても、それが単なる誤記であると明らかな場合は判決の効力に影響しない。
問題の所在(論点)
指定された判決宣告期日が守られず、被告人不在の期日において変更告知がなされた場合の手続の適法性、および判決書署名欄における役職名の誤記が判決の効力に及ぼす影響が問題となる。
規範
公判期日の変更は必ずしも法廷において行うことを要せず、裁判長が適法に期日を変更し、被告人及び弁護人にその旨が適切に通知され、実際に当該期日に出頭して宣告を受けたのであれば、事前の手続に瑕疵があっても判決宣告は有効である。また、判決書における職名の誤記は、客観的に誤記であることが明らかな場合には判決の違法事由とはならない。
重要事実
第一審判決の宣告期日が昭和25年9月15日に指定されていたが、同日に公判が開かれず、同年9月22日に被告人不在のまま延期が告げられた。裁判所書記官は変更決定書の謄本を被告人と弁護人に送達し、同年10月16日に両名が出廷した上で判決の宣告がなされた。また、原判決の署名欄において、裁判長ではない判事の名前の前に「裁判長」との記載がなされていた。
あてはめ
宣告期日の変更について、9月22日の公判に被告人らは出頭していなかったが、裁判長が期日を変更することは法廷外でも可能であり、変更の通知(謄本送達)は適正になされている。実際に10月16日には被告人らが出廷して宣告を受けているため、実質的な防御権の侵害はなく、手続上の瑕疵は判決を違法とするまでには至らない。署名欄の「裁判長」という記載についても、当該判事が裁判長でなかったことは公判調書等から明らかであり、単なる表記上の誤記として宥恕される。
結論
判決宣告の手続および署名の誤記に瑕疵はあるものの、判決自体を違法とすることはできず、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟手続における軽微な形式的瑕疵(期日変更手続の不備や判決書の誤記)が、直ちに判決の無効や破棄事由にはならないことを示す。実務上は、被告人の出頭確保や告知といった実質的適正手続が最終的に補完されているかどうかが重要視される。
事件番号: 昭和25(れ)1217 / 裁判年月日: 昭和25年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書に訂正手続の欠落等の形式的瑕疵があっても、判決の成立が真正と認められる限り当然無効とはならず、また、公判期日の変更命令が通知されなかった違法があっても、その後の手続が適法に行われ判決に影響を及ぼさない場合は破棄理由とならない。 第1 事案の概要:被告人の刑事事件において、原判決の原本に「転出…