判旨
判決書に訂正手続の欠落等の形式的瑕疵があっても、判決の成立が真正と認められる限り当然無効とはならず、また、公判期日の変更命令が通知されなかった違法があっても、その後の手続が適法に行われ判決に影響を及ぼさない場合は破棄理由とならない。
問題の所在(論点)
1. 判決書の訂正手続の不備(形式的瑕疵)が判決を無効または破棄すべき事由となるか。2. 公判期日の変更命令が当事者に告知されなかった手続上の違法が、判決の破棄事由となるか。
規範
1. 判決原本の文字抹消につき訂正手続(認印や字数記載)が欠落していても、判決が作成者により正当になされ、真正に成立したと認められる場合は、単なる遺脱にすぎず判決を当然無効とすべき理由にはならない。2. 訴訟手続に違法(期日変更命令の不告知等)があったとしても、その後の手続が適法に更新・進行され、当該違法が判決の結果に影響を及ぼさないと認められる場合には、判決の破棄事由とはならない。
重要事実
被告人の刑事事件において、原判決の原本に「転出書証」の「書」の字が抹消されていたが、裁判官の認印や削除字数の記載がなかった。また、原審裁判長が一度指定した公判期日を職権で変更したが、その変更命令が被告人や弁護人に告知(送達)されなかった。しかし、その後改めて別の公判期日が指定され、被告人・弁護人に召喚状が送達された上で、適法に出頭・事実審理・弁論を経て判決が言い渡された。
あてはめ
1. 判決書の抹消箇所について、手続上の遺脱はあるものの、判決の真正な成立を疑わせる形跡はなく、判決作成者が正当に行ったものと認められる。したがって、形式的瑕疵は判決の効力に影響しない。2. 期日変更命令の不告知については、確かに手続上の違法がある。しかし、その後に改めて適法な召喚手続がとられ、被告人側の出頭のもとに事実審理や弁論が行われた上で判決がなされている。この経過に照らせば、当初の不告知という違法は、最終的な判決結果に対して何ら影響を及ぼすものではないと評価できる。
結論
本件各瑕疵および違法は、判決を無効とするものではなく、また判決に影響を及ぼすべき違法ともいえないため、上告棄却を免れない。
実務上の射程
手続上の違法を理由に判決破棄を求める際、刑事訴訟法上の「判決に影響を及ぼすべきこと」という要件を検討する際の参考となる。特に、初期段階の告知漏れがあっても、その後の手続が適正に完結していれば影響性が否定される傾向を示す。
事件番号: 昭和26(れ)1314 / 裁判年月日: 昭和26年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告理由が刑事訴訟法405条に該当せず、かつ同法411条を適用して判決を破棄すべき事由も見当たらないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てたが、添付された判決文からは被告人が起訴された具体的な罪名や犯罪事実、および弁護人が主張した上告趣意…
事件番号: 昭和28(あ)2055 / 裁判年月日: 昭和31年12月27日 / 結論: 棄却
一 原判決が「第一院判決挙示の証拠によると、同判示の偽造公文書は、いずれも、当該公文書の信用を害する危険がある程度の形式外観を具えていることが認められる」旨の判示並びに『第一審判決の判示各偽造外食券に「当該地方食糧配給公団名及び交付配給所名のなつ印」の要求されるのは、整理上交付配給所を明らかにするためで、これを欠くから…
事件番号: 昭和25(み)7 / 裁判年月日: 昭和25年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決訂正の申立において、訴訟手続に関する刑事訴訟規則の違憲のみを主張し、判決内容の誤りを主張しない場合は、刑事訴訟法415条1項の申立理由として不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、最高裁判所の判決に対し、刑事訴訟法415条1項に基づき判決訂正の申立を行った。その申立理由は、当裁判所の訴訟手…