所論被告人に対する検察事務官の第一回聴取書の日附が昭和二三年三月二八日であり、同第二回聴取書の日附が同月二七日となつていることは所論指摘のとおりである。しかし本件起訴が同月二七日であること等の点から考えて、右第一回聴取書の日附も同月二七日の誤記と認められるのであるが、それはさておくも、右第一、二回の聴取書は右日附頃適法に作成されたものであり、原審において右両聴取書が証拠調された際も被告人も弁護人も所論の点につき何等の異議も述べていないのであつて、右日附が右の如く逆になつていることの一事によつては、右各聴取書が証拠能力のないものと論結し得ない。
聴取書の作成日附の誤記とその聴取書の証拠能力
旧刑訴法71条,旧刑訴法337条
判旨
検察事務官による聴取書の日付が逆転している等の形式的不備があっても、それが誤記と認められ、適法に作成されたものであれば、直ちに証拠能力が否定されるものではない。
問題の所在(論点)
聴取書(供述録取書)の日付の逆転や重複といった形式的な不備がある場合、当該書面の証拠能力が否定されるか。
規範
書面の日付の前後関係に矛盾がある等の形式的な不備が存在する場合であっても、作成の経緯や起訴日等の諸事情に照らし、それが単なる誤記であって適法に作成されたものと認められるときは、その一事をもって証拠能力は否定されない。
重要事実
被告人に対する検察事務官の第一回聴取書の日付が昭和23年3月28日、第二回聴取書の日付が同月27日となっており、日付が逆転していた。また、「第二回聴取書」と題する書面が2種類(3月27日付と4月20日付)存在していた。しかし、本件起訴日は3月27日であり、記録の編綴順序や内容からも日付の誤記であることが客観的に明らかであった。第一審・原審において、被告人及び弁護人はこれらの証拠調べに対し異議を述べていなかった。
あてはめ
本件における日付の逆転は、起訴日(3月27日)等の客観的事実から照らせば、第一回聴取書の日付が誤記であると認められる。また、同タイトルの書面が複数存在する点についても、記録上の綴じられた位置や内容を確認すれば、原審がどの書面を採証したかは明瞭である。加えて、証拠調べの際に当事者から異議が述べられていないことも考慮すれば、これらの形式的瑕疵は書面の成立の真正を揺るがすものではなく、適法に作成されたものと評価できる。
結論
聴取書の日付が逆転していることの一事をもって、証拠能力がないと論結することはできない。
実務上の射程
伝聞証拠の形式的要件に関する判断である。日付の誤記等の軽微な瑕疵については、作成過程の適法性が実質的に確保されていれば証拠能力を認める実務の運用を肯定している。答案上は、供述録取書の作成手続に瑕疵がある場合に、それが証拠能力を否定すべき重大な瑕疵か、単なる誤記等の些末な瑕疵かを区別する際の考慮要素として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)568 / 裁判年月日: 昭和26年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護人選任書の送達日付に誤記がある場合であっても、記録上弁護人が公判期日に出頭していることが明らかなときは、実質的な弁護権の行使を否定すべきではなく、手続上の違憲は認められない。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決に対し、弁護人選任書の送達日付が昭和24年9月22日となっている点について、同年8…