原判決が証拠に挙示した被告人の原審公判の供述によれば第一審判決の事実認定の通りである旨を述べている。そして所論の点に対する第一審判決の事実認定によれば、犯罪日時は昭和二三年八月二六日となつているし、また原審が証拠に挙示した被害者Aの盗難被害届には被害日時は昭和二三年八月二六日となつている。そして記録を精査しても所論犯罪の日時が昭和二三年八月二六日でないと認むべき何等の資料もない等の点に鑑みれば原審では「八月」の二字を書き落したものであると認めるを相当とする。犯罪日時の記載として不正確であるというそしりはまぬかれないが、破棄の理由とするに足りないから論旨は採用できない。
不正確な犯罪日時の記載と破棄理由の有無
旧刑訴法360条,旧刑訴法410条20号
判旨
判決書において犯罪日時の「月」を書き落とした記載の不備があっても、他の証拠や記録から日時が特定可能であり、被告人の防御に実質的な不利益が生じない場合には、直ちに判決の破棄理由とはならない。
問題の所在(論点)
判決書において犯罪日時の記載に欠落(誤記)がある場合、それが刑事訴訟法上の判決破棄事由となるか。
規範
判決書における事実摘示に不正確な点があったとしても、記録上の他の証拠(被告人の供述、被害届等)と照らし合わせてその内容が客観的に特定可能であり、かつそれが判決の結論に影響を及ぼすような重大な誤認でない限り、上告理由としての判決破棄事由には当たらない。
重要事実
被告人が窃盗等の罪に問われた事案において、第一審判決では犯罪日時を「昭和23年8月26日」と認定していた。しかし、原判決(控訴審)の事実摘示において、犯罪日時の「8月」という二字を書き落とした状態で記載がなされた。これに対し、弁護側が犯罪日時の不正確さを理由に上告を申し立てたものである。
あてはめ
本件では、原審が証拠とした被告人の公判供述において第一審の事実認定を認める旨が述べられており、そこでは犯罪日時が「8月26日」とされていた。また、被害者の盗難被害届にも同様の日時が記載されていた。記録を精査しても「8月26日」ではないと認めるべき資料はなく、単なる「8月」の書き落としと認められる。このような不備は不正確ではあるものの、事案の同一性を揺るがすものではなく、判決を破棄してまで是正すべき重大な違法とはいえない。
結論
本件の犯罪日時の書き落としは、判決を破棄する理由にはならない。上告棄却。
実務上の射程
起訴状の特定(刑訴法256条3項)や判決書の事実適示において、軽微な誤記や脱漏があったとしても、被告人の防御権を侵害せず、記録から真実が明らかな場合には適法とされる実務上の判断枠組みを示している。答案上は、理由不備や事実誤認の主張に対する反論として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)4839 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪の日時は原則として罪となるべき事実に属しないため、認定された日時が証拠と相違しても直ちに訴訟法違反とはならない。また、判決書における日時の誤記が明白である場合には、上告理由としての適法性を欠く。 第1 事案の概要:第一審判決において、判示第二の犯罪の日時が「昭和25年12月21日」と認定されて…