判旨
犯罪の日時は原則として罪となるべき事実に属しないため、認定された日時が証拠と相違しても直ちに訴訟法違反とはならない。また、判決書における日時の誤記が明白である場合には、上告理由としての適法性を欠く。
問題の所在(論点)
判決において認定された犯罪の日時が証拠と相違する場合に、それが刑訴法上の「罪となるべき事実」の認定に関する違法(訴訟法違反)となるか。また、明白な誤記が含まれる判決の効力が問われた。
規範
犯罪の日時は、原則として「罪となるべき事実」(刑訴法335条1項)そのものには属さない。したがって、認定された日時が証拠と多少異なっていたとしても、それだけで直ちに訴訟法違反(判決に影響を及ぼすべき事実誤認等)を構成するものではない。また、判決書の記載が客観的な資料に照らして単なる誤記であることが明白な場合には、これを理由に判決の不当を訴えることはできない。
重要事実
第一審判決において、判示第二の犯罪の日時が「昭和25年12月21日」と認定されていた。しかし、本件起訴状や証拠等の客観的事資料に照らせば、実際の日時は「同年12月31日」であることが明らかであった。弁護人は、この認定日時の相違を理由に、原判決には判例違反および訴訟法違反があるとして上告を申し立てた。なお、当該主張は原審(控訴審)ではなされていなかった。
あてはめ
最高裁は、犯罪の日時について、事案の性質上、特定の犯罪を識別する要素にはなり得るものの、原則として刑罰権の存否や範囲を直接左右する「罪となるべき事実」そのものではないと解した。本件において、第一審が認定した「12月21日」という日時は、起訴状や証拠関係から「12月31日」の誤記であることが客観的に明白である。このような明白な誤記にすぎない事項を捉えて、判決が証拠に基づかないものであると主張することは、上告理由(刑訴法405条)としての実質を欠くものといえる。
結論
本件の上告は、刑訴法405条所定の上告理由に当たらないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
訴因の特定(256条3項)における日時の重要性と、判決における「罪となるべき事実」の認定としての重要性を区別する際に活用できる。特に、アリバイ等の防御上の重要利益に関わらない範囲での軽微な日時の不一致や誤記が、直ちに判決の破棄事由にはならないことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和26(れ)427 / 裁判年月日: 昭和26年7月17日 / 結論: 棄却
原判決が証拠に挙示した被告人の原審公判の供述によれば第一審判決の事実認定の通りである旨を述べている。そして所論の点に対する第一審判決の事実認定によれば、犯罪日時は昭和二三年八月二六日となつているし、また原審が証拠に挙示した被害者Aの盗難被害届には被害日時は昭和二三年八月二六日となつている。そして記録を精査しても所論犯罪…
事件番号: 昭和23(れ)1929 / 裁判年月日: 昭和24年4月14日 / 結論: 棄却
犯罪の日時は、いわゆる「罪となるべき事実」そのものではないから、たとえその認定と証拠との間に齟齬があつたとしても、その一事をもつて直ちに原判決に上告理由となるべき法令違反があるということはできない。