犯罪の日時は、いわゆる「罪となるべき事実」そのものではないから、たとえその認定と証拠との間に齟齬があつたとしても、その一事をもつて直ちに原判決に上告理由となるべき法令違反があるということはできない。
犯罪日時認定の過誤と上告理由の有無
旧刑訴法360条1項
判旨
犯行の日時は、本来罪となるべき事実そのものではなく、単に犯行の状況や同一性を示す事項に過ぎないため、認定に多少の差異があっても、直ちに判決に影響を及ぼす法令違反とはならない。
問題の所在(論点)
訴因や判決における犯行日時の明示が、犯罪の構成要件的要素(罪となるべき事実)そのものに該当するか。また、日時の認定に差異がある場合、それが直ちに上告理由となる法令違反に該当するか。
規範
犯行の日時は、犯罪の構成要件をなす「罪となるべき事実」そのものではなく、犯罪事実の特定(同一性の識別)や犯行の情況を示す事項に留まる。したがって、認定された日時に多少の幅や差異が生じたとしても、それが犯罪の同一性を害するものでない限り、判決に影響を及ぼす違法とはならない。
重要事実
被告人が犯した罪に関し、原審(二審)は犯行日時を「昭和22年10月29日午後10時頃から翌30日までの間」と認定した。これに対し、弁護側は「30日午後12時前後」と認定すべきであったと主張し、事実認定に過誤があるとして上告した。
事件番号: 昭和24(れ)2093 / 裁判年月日: 昭和25年2月2日 / 結論: 棄却
一 原審において舊刑訴法第三六〇條第二項に當る事由が主張された形跡は、記録のどこにも存在していない。ただ「拳銃の發射機能を有するや否やを鑑定して頂きたい」旨の鑑定申請をしているが(六九九丁)それだけでは同條第二項の主張がなされたとは認めることができないかりに、本件ピストルは發射機能を有しないという主張が現實になされたと…
あてはめ
本件において、原審が認定した日時(29日夜間から30日にかけて)と上告人が主張する日時(30日深夜)の差は、犯行の同一性を揺るがすほどの重大な差異ではない。犯行日時はあくまで犯行の情況を具体化する要素に過ぎないため、証拠に基づき原審が合理的な範囲で認定した以上、その微細な不一致を捉えて事実認定の過誤を主張することは、証拠の取捨選択という事実審の裁量を不当に非難するものといえる。
結論
犯行日時の認定に所論のような差異があったとしても、直ちに法令違反には当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法256条3項の「時、場所及び方法」の特定度に関する議論において、日時は「できる限り」特定すべき事項であり、構成要件そのものではないとする判例の基本姿勢を示す。アリバイ工作が争点となる場合などを除き、日時の多少のズレは訴因変更や認定の違法として認められにくいことを示唆している。
事件番号: 昭和23(れ)1288 / 裁判年月日: 昭和24年5月31日 / 結論: 棄却
犯罪の日時は犯罪の構成要件ではないから認定事實と證據との間に一日位の相違があつても事實の合一性を害するものではないから上告の理由とならない。
事件番号: 昭和25(れ)1203 / 裁判年月日: 昭和25年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の供述証拠に細部の食い違いがある場合でも、論理則や経験則に反しない限り、自由心証によりその一部を採択して事実認定を行うことは許容される。証拠の総合的な評価は裁判所の合理的な裁量に委ねられている。 第1 事案の概要:被告人と共犯者の各供述において、共謀の発議者、共謀の場所、盗品の処分方法といった…