一 原審において舊刑訴法第三六〇條第二項に當る事由が主張された形跡は、記録のどこにも存在していない。ただ「拳銃の發射機能を有するや否やを鑑定して頂きたい」旨の鑑定申請をしているが(六九九丁)それだけでは同條第二項の主張がなされたとは認めることができないかりに、本件ピストルは發射機能を有しないという主張が現實になされたとしても、それは目的物に關する犯罪構成要件事實の否認たるに過ぎない性質を有し、從つて同條第二項に當る事實上の主張と認めることを得ない。されば、原判決がこれに關する所論の判斷を示さなかつたことは正當である。 二 盗犯において被害品の価格が判示されていない場合、被害品の価格についての証人申請を却下しながら、価格に何等関係のない事実について同証人提出の被害届書の記載を証拠に採ることは、刑訴応急措置法第一二条に違反しない。
一 拳銃が發射機能を有しない旨の主張と舊刑訴法第三六〇條第二項 二 証人申請を却下しながらその証人作成の被害届書記載を証拠に採ることの違法でない事例
舊刑訴法360條2項,銃砲等所持禁止令1條,刑訴応急措置法12条1項
判旨
犯罪の日時は原則として罪となるべき事実に当たらないため、適用法律や時効に関係する等の特殊な事情がない限り、認定と証拠の間に食い違いがあっても判決に影響を及ぼさない。また、盗犯において被害品の価格は犯罪内容を特定するのに必要不可欠な要素ではない。
問題の所在(論点)
刑事裁判における「罪となるべき事実」としての犯罪日時の要否、および窃盗罪における被害品特定(所有者・価格)の程度が問題となった。
規範
1. 犯罪の日時:原則として「罪となるべき事実」に含まれず、その認定に証拠との相違があっても、適用法律の差異、時効の完成、その他の特殊な事情がない限り、判決に影響を及ぼす違法とはならない。 2. 犯罪の特定:窃盗罪等の認定において、被害物件の所有者・所持者の記載は、他人の占有・所有に属することを認め得る程度に特定されていれば足りる。また、被害品の価格は犯罪の内容を特定するために必要欠くべからざる要素ではない。
事件番号: 昭和23(れ)1929 / 裁判年月日: 昭和24年4月14日 / 結論: 棄却
犯罪の日時は、いわゆる「罪となるべき事実」そのものではないから、たとえその認定と証拠との間に齟齬があつたとしても、その一事をもつて直ちに原判決に上告理由となるべき法令違反があるということはできない。
重要事実
被告人らは窃盗等の罪で起訴された。原審は、被告人の自白や証拠等に基づき犯罪事実を認定したが、弁護人は、(1)犯罪日時の認定と証拠の食い違い、(2)被害物件の所有者・所持者の記載欠如、(3)被害品価格の立証のための証人喚問申請を却下しながら同人作成の被害届を証拠とした点について、違法であると主張して上告した。
あてはめ
1. 日時について:本件において日時の認定が、適用法律や時効の判断に影響を及ぼすといった特殊な事情は認められない。したがって、証拠との間に多少の食い違いがあっても原判決に影響を及ぼさない。 2. 被害物件について:原判決は、他人の所有・占有に属することを認め得る程度に事実を認定しており、記載として十分である。 3. 被害価格について:弁護人は価格立証のために証人を申請したが、裁判所が採用した被害届は価格とは無関係な事実(被害の顛末)に関するものであり、かつ、窃盗罪の特定に価格は不可欠ではないため、証人申請却下後の証拠採用に違法はない。
結論
本件各上告を棄却する。犯罪日時の軽微な齟齬や被害品価格の不記載は、犯罪の特定や判決の妥当性に影響を及ぼさない。
実務上の射程
訴因の特定や「罪となるべき事実」の判示において、日時がどの程度厳密に求められるかの指標となる。特にアリバイ主張がない場合や時効が問題にならない場合、日時の多少のズレは判決の維持に影響しないという実務慣行を支持する。また、窃盗罪の判示における所有者特定や価格の要否に関する基本的態度を示すものである。
事件番号: 昭和25(れ)1203 / 裁判年月日: 昭和25年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の供述証拠に細部の食い違いがある場合でも、論理則や経験則に反しない限り、自由心証によりその一部を採択して事実認定を行うことは許容される。証拠の総合的な評価は裁判所の合理的な裁量に委ねられている。 第1 事案の概要:被告人と共犯者の各供述において、共謀の発議者、共謀の場所、盗品の処分方法といった…
事件番号: 昭和25(れ)793 / 裁判年月日: 昭和25年8月9日 / 結論: 棄却
賍物牙保罪が成立するためには、賍物の處分行爲の媒介周旋を行うについて、利益を伴うことを必要としない。
事件番号: 昭和26(れ)713 / 裁判年月日: 昭和26年7月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の取捨選択や事実認定に関する非難、および量刑不当の主張は、刑事訴訟応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決の証拠取捨選択および事実認定を非難し、あわせて量刑が不当であるとして上告を申し立てた事案。 第2 問題の所在(論点):原審の専権事項で…
事件番号: 昭和26(れ)1695 / 裁判年月日: 昭和26年10月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令違反の罪が成立するためには、所持された拳銃等が一時的に使用し得ない状態であっても、修繕すれば使用可能になり得るものであれば足りる。 第1 事案の概要:被告人が所持していた拳銃について、弁護人は使用不能なものである旨を主張したが、原審(第一審・控訴審)はこれを「通常の拳銃」であると認…