賍物牙保罪が成立するためには、賍物の處分行爲の媒介周旋を行うについて、利益を伴うことを必要としない。
賍物牙保罪の成立と利益を伴うことの要否
刑法256條2項
判旨
贓物罪における牙保(あっせん)の成立には利益を得る意図は不要であり、また、知情(故意)という犯罪の主観的要件については被告人の自白以外に直接の補強証拠を必要としない。
問題の所在(論点)
1. 贓物罪(刑法256条2項)における「牙保」の成立に、利益を得る目的や実利の収受が必要か。2. 犯意(贓物知情)という主観的要件の認定において、被告人の自白以外に独立の補強証拠が必要か。
規範
1. 贓物牙保罪における「牙保」とは、贓物の処分行為を媒介・周旋することを指し、その行為によって利益を得ることを要しない。2. 憲法38条3項及び刑訴法319条2項にいう補強証拠について、犯罪の主観的要件(知情等)に関しては、被告人の自白以外に直接の補強証拠を必要としない。
重要事実
被告人Aは共犯者らと共に強盗を行い、その後、盗品であることを知りながらその処分を媒介(牙保)した。また、被告人Eについても贓物知情(盗品であることの認識)があったとして贓物罪に問われた。被告人側は、牙保には利益の発生が必要であること、および贓物知情という主観的要件について自白以外の補強証拠が欠けているため有罪とできないことを主張して上告した。
事件番号: 昭和23(れ)1373 / 裁判年月日: 昭和24年1月11日 / 結論: 棄却
一 賍物の賣買が所論のごとく被告人の名儀をもつてされたとしても他人の依頼に因り他人の利益のためにするものである以上論旨にいわゆる「賣買の周旋」というを妨げない。 二 賍物の賣却を爲した者が、自ら賣主として賍物を賣却したか、盜罪犯人の名儀若しくはその代理名儀で賣却したかは賍物牙保罪の成否に影響するところはない。
あてはめ
1. 牙保行為の意義について、本質は贓物の処分を媒介・周旋する点にあり、利益を伴うことは要件ではない。したがって、利益収受の有無にかかわらず、媒介行為があれば牙保罪は成立する。2. 自白の補強証拠について、贓物知情のような主観的意図は、性質上客観的な証拠による直接的な証明が困難である。判例の趣旨に照らせば、犯罪の客観的事実(罪体)に補強証拠があれば足り、主観的要件についてまで個別の補強証拠を求める必要はない。
結論
1. 牙保罪の成立に利益の存在は不要である。2. 贓物知情等の主観的要件については、自白のみで認定することが可能であり、直接の補強証拠は不要である。
実務上の射程
自白の補強法則(憲法38条3項、刑訴法319条2項)の及ぶ範囲が「客観的な罪体」に限られることを示す重要判例である。主観的要件(故意・目的)や特殊な身分については、自白のみで認定可能であるという論証で活用する。また、贓物罪の処罰根拠が追求権の困難化にあることを踏まえ、無償の媒介も処罰対象となる点も実務上重要である。
事件番号: 昭和25(あ)2316 / 裁判年月日: 昭和27年4月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品等罪(賍物罪)の成立には、犯人が当該犯行によって自ら利益を得ることは必要ではない。 第1 事案の概要:被告人が盗品等罪(賍物罪)に問われた事案において、被告人は自身が当該犯行によって何ら利益を得ていないことを理由に、犯罪が成立しない旨を主張して上告した。 第2 問題の所在(論点):刑法256条…
事件番号: 昭和25(れ)762 / 裁判年月日: 昭和25年10月5日 / 結論: 棄却
鉄砲等を自己の実力支配下に置くという事実の認識がある以上、積極的にその物件を預る意思の下に所持が開始されたか否かというが如き事実は、銃砲等所持禁止令違反罪の成否を左右しない。
事件番号: 昭和24(れ)2093 / 裁判年月日: 昭和25年2月2日 / 結論: 棄却
一 原審において舊刑訴法第三六〇條第二項に當る事由が主張された形跡は、記録のどこにも存在していない。ただ「拳銃の發射機能を有するや否やを鑑定して頂きたい」旨の鑑定申請をしているが(六九九丁)それだけでは同條第二項の主張がなされたとは認めることができないかりに、本件ピストルは發射機能を有しないという主張が現實になされたと…