判旨
労働基準法違反の被告事件において、上告審での審理中に大赦令が公布された場合、大赦の対象となった公訴事実については免訴の言渡しをすべきである。
問題の所在(論点)
上告審の審理中に、公訴事実の一部について大赦があった場合、裁判所はどのような判断を下すべきか。刑事訴訟法337条3号の免訴事由との関係が問題となる。
規範
刑事訴訟法411条5号に基づき、判決後の刑の廃止、変更又は大赦があったときは、職権をもって原判決を破棄することができる。その上で、同法337条3号により、大赦があったときは被告人に対し免訴の言渡しをしなければならない。
重要事実
被告人は、労働基準法32条(労働時間)、同法89条(就業規則の作成・届出義務)、及び同法56条(最低年齢)に違反したとして起訴された。第一審および控訴審で有罪判決を受けた後、上告審の継続中に、昭和27年4月28日政令第117号「大赦令」が公布・施行された。この大赦令1条10号により、被告人の犯した労働基準法32条違反および89条違反の罪については、大赦の対象に含まれることとなった。
あてはめ
本件公訴事実のうち、労働基準法32条違反(労働時間制限違反)および同法89条違反(就業規則義務違反)については、大赦令1条10号に規定される大赦の対象に該当する。したがって、これらの事実については刑事訴訟法411条5号(職権による判決後の大赦)に基づき原判決及び第一審判決を破棄した上で、同法337条3号に基づき免訴を言い渡すべきである。一方で、大赦の対象に含まれない労働基準法56条(最低年齢)違反の点については、第一審判決が証拠により確定した事実に基づき、実体判決を維持し、罰金刑に処するのが相当である。
結論
労働基準法32条及び89条違反については免訴とし、大赦の対象外である同法56条違反については、被告人を罰金5,000円に処する。
実務上の射程
実務上、上告審等の事後審において免訴事由(大赦、刑の廃止等)が生じた場合の処理手順を示すものである。複数の公訴事実がある場合、大赦の対象となる部分については免訴とし、対象外の部分については実体的な判断を維持するという、罪数・手続の個別分離的な対応を確認する際に有用である。
事件番号: 昭和25(あ)183 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: その他
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