判旨
労働基準法違反の罪において、一つの行為が複数の法条に触れる観念的競合の関係にある場合、大赦令の対象とならない事実が含まれていれば、その部分についてのみ刑を科し、大赦の対象となった事実については免訴すべきである。
問題の所在(論点)
数個の罪が観念的競合の関係にある場合において、その一部が大赦令の対象となり、他が対象外であるときの裁判所の措置および罪数処理の在り方が問題となる。
規範
一つの行為が複数の罪名に触れる場合(一所為数法、刑法54条1項前段)、それぞれの罪について大赦の成否を判断し、大赦令に該当する事実については免訴(刑訴法337条1号)とし、大赦の対象外である事実については、重い方の罪の刑をもって処断する。
重要事実
被告人は労働基準法違反(62条1項の年少者の深夜業禁止違反、および60条1項・32条1項の労働時間制限違反)の事実により起訴された。第一審判決後、昭和27年4月28日に大赦令が公布・施行された。本件の事案には、大赦の対象となる事実と、大赦令1条10号の除外規定等により大赦の対象とならない事実が混在していた。また、一部の事実については、深夜業禁止違反と労働時間制限違反が観念的競合の関係にあった。
あてはめ
本件のうち、大赦令1条10号等により大赦の対象から除外されない爾余の事実については、既に大赦があったものとして免訴を免れない。一方で、主文に掲げられた特定の事実(14個の所為等)については大赦の対象とならない。これらの事実は労働基準法62条1項違反と、同法60条1項・32条1項違反の観念的競合(刑法54条1項前段)の関係にある。したがって、刑法10条により犯情の重い労働基準法62条1項違反の罪の刑を選択し、併合罪(刑法45条)の例に従って処断すべきである。
結論
大赦の対象事実は免訴とし、大赦にならない事実については、観念的競合として重い方の罪(年少者の深夜業禁止違反)の刑により罰金刑に処する。
実務上の射程
大赦という特殊な事情を背景とした判例であるが、実務上の射程としては、観念的競合の関係にある数罪のうち一部にのみ訴訟条件の欠如(免訴事由等)が生じた場合の処理の先例となる。実体的には併合罪として処理される複数の事実群の中で、一部が免訴となる場合の主文構成の参考となる。
事件番号: 昭和25(あ)183 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】判決後、上告審での職権調査により、所得税法違反および労働基準法違反の罪が昭和27年政令第117号大赦令の対象となった場合、裁判所は刑訴法337条3号に基づき免訴を言い渡すべきである。一方、大赦の対象外である失業保険法違反については、適法な上告理由がない限り、第一審の認定した事実に基づき刑を科すのが…
事件番号: 昭和27(れ)41 / 裁判年月日: 昭和27年11月11日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】刑事被告事件の係属中に大赦がなされた場合、当該公訴事実については実体審理を継続できず、刑事訴訟法に基づき免訴の判決を言い渡さなければならない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和22年から23年にかけて、①繊維製品配給消費統制規則に違反して衣料品を販売譲渡し(臨時物資需給調整法違反)、②労働者に対し…
事件番号: 昭和27(あ)3350 / 裁判年月日: 昭和28年12月15日 / 結論: 棄却
職業安定法第三二条第一項の規定は、労働基準法第六条の規定に対しいわゆる特別法の関係にあるものではない。